建物は「単なる場所ではない」
26年前の駅伝大会の映像では、走る子どもたちの向こうに今野さんの旅館が見えます。地区の中心部に立つ旅館は、津島の風景の一部と言ってもいい建物ですが、傷みもあり、保存には費用もかかります。

今野秀則さん「単なる場所ではなくて、自分のその精神的な部分につながる歴史だとか、伝統、文化、地域の人々との交流とか、全部そこに詰まっている」
原発事故前まであった、生活の基盤や住民の交流が戻らない現状では、さらなる負担にもなり得る住宅の保存は、容易には決められません。一方、政府は去年、新たに特定帰還居住区域を設け、帰還を希望する世帯に限って除染や解体を進める方針を示しました。
今野秀則さん「やっぱり飛び飛びですよ。この部分だけでしょ。せいぜい300メートルくらい…。まあ、点ですよね」
帰還居住区域は地区の中で点在しているため、避難指示が解除されても、生活の再建は見通せません。

今野秀則さん「どうしたらいいのかなって。子どもたちにも相談はしているんだけど、最後は自分でやっぱり決断するしかないので」