2022年9月、静岡県内で1万戸が浸水被害を受けた台風15号。現場では今、河川の防災対策をどうするのか、課題になっています。
台風15号の被害を受けた静岡市葵区の旅館です。元々、ここには土砂がありませんでした。近くを流れる湯山川のはん濫により、館内に大量の濁流がなだれ込みました。電気や水道などのインフラ設備は、今も戻っていません。
<湯山温泉 元湯館女将 海野加奈子さん>
「こちらは囲炉裏などもありまして、小上がりの場所になっていたんですけど、ひどかったので、土砂がそのままになっていますね」
<湯山温泉 元湯館 海野博揮社長>
「ここがお風呂だったところになります。大体2m近く土砂が入っている状態になります」
3か月経ったいまも、被災当時のままです。なぜ、復旧が進まないのか。その要因の一つが湯山川にありました。台風による土砂を地道に取り除いても、雨のたびにまた土砂が流れてくるといいます。
<湯山温泉 元湯館 海野博揮社長>
「この場所からは見えないんですけど、1km以上奥の山から崩れたものになります」
湯山川の上流には、静岡県が、2023年度中に土砂の流れをコントロールする「砂防ダム」を設置する予定になっています。それまでは、旅館再開の見通しが立ちません。
<湯山温泉 元湯館女将 海野加奈子さん>
「奥の方をやっていただかない限りは、結局雨の度に同じことが起こりますので、奥をやってからとなると、本当に多分もうかなりの時間がかかるんだろうなとは思います」
台風15号では山間部だけでなく、市街地でも多くの河川がはん濫しました。その一つが「暴れ川」と言われる静岡市の巴川。今回の台風では、およそ4000戸の浸水被害が出ました。
巴川は、1974年の七夕豪雨で2万戸近くが浸水したため、大規模な治水工事が進められていました。今回の被害では、被害を大幅に抑えられたと静岡県は話します。巴川の治水対策は、今も進められています。
<竹川知佳記者>
「大雨の際、巴川の水を分散させる役割を持つ麻機遊水地です。現在、土を掘り下げる作業が行われています」
総面積200haにも及ぶ麻機遊水地の拡張工事は、今も続いています。
その他にも治水工事は行われています。これは地下10mの地点に埋めてある雨水幹線の工事です。雨水幹線とは、雨水を取り込んで、海や川に流すための下水管です。ポンプを使わず、高低差によって、自然の力により、川に配水できるようになっています。
<静岡市上下水道局 下水道部 佐藤豪さん>
「いままで浸水してきた地域の雨水の量が減りますので、浸水の被害が低減される効果はあると思っています」
静岡県は、こうした治水対策を「スピード感をもって進める」としています。
<静岡県交通基盤部河川企画課 山田真史課長>
「現状、10年に1度の確率の雨に対応した整備を行っていますので、将来的には50年に1回の確率で降る雨に対する整備まで行ってまいりますので、まだ時間はかかると思っています」
しかし、台風15号で防ぎきれなかった大雨による被害はたくさんあり、気候変動がますます進めば、さらなる対策が必要になってきます。