静岡県牧之原市から吉田町にかけて発生した竜巻で、横転した車に乗っていた50代の男性の死亡が確認されました。国内最大級の竜巻で、被害を受けたイチゴ農家は「言葉が出ない」とその辛さを話しました。

静岡県牧之原市から吉田町にかけ猛威を振るった竜巻。吉田町によりますと9月5日午後1時ごろ、吉田ショッピングガーデンの駐車場で軽四貨物自動車が横転し、乗っていた静岡県藤枝市の50代男性が死亡したということです。

竜巻の影響はさまざまな場所に広がっています。将棋の藤井聡太七冠が、タイトル6連覇を目指す「王位戦」七番勝負。第6局は静岡県牧之原市の平田寺で予定されていましたが、東京の将棋会館に会場が変更されました。

気象庁は、その風速が約75メートルだったと推定されると発表しました。突風の強さを6段階で示す「改良藤田スケール」では上から3番目にあたる「JEF3」に該当し、本州では初めての認定で国内最大規模だったとしています。

<社会部 野田栞里記者>
「竜巻の被害に遭った牧之原市細江です。こちらの農業用のビニールハウスなんですが鉄製の骨組みが押しつぶされるようにぺしゃんこになっています」

細江地区でイチゴを15年育てる杉山泰行さんは、2025年9月末、イチゴの苗3万本をこのハウスに植え替える予定で準備を進めていました。

<杉山泰行さん>
「ここは入れないですね」

<野田記者>
「扉が歪んでる」

<杉山さん>
「隣のハウスなら」

<野田記者>
「失礼します、うわあ」

<杉山さん>
「何も言葉が出なくて。信じられなくて」

ハウスの中心にある梁の部分は根元から傾いていました。

<野田記者>
「ぐっと曲がっていますね。この分だけずれ動いたってことですよね」

<杉山さん>
「垂直だったのにね」

ハウスの立て直しには約3000万円かかるほか、栽培ができないため今シーズンの直売所での販売は取りやめる予定で、売上額としては2000万円ほどの損失を見込んでいるそうです。しかし、少し離れた場所にあるイチゴの苗自体は間一髪、竜巻の被害を逃れていました。

<杉山さん>
「生産者としてはすごくうれしいですけど、ただ植える場所がないわけなので」

不安に苛まれながらも杉山さんは2026年のシーズンに向け作業を続けるということです。

<杉山さん>
「これで辞めたら一生後悔すると思うので、いままでの15年をなくしたくないので、大変だろうけど、一からやり直したいと思います」

国内最大級とされる竜巻の深い爪痕。いまだに多くの人たちが日常を取り戻せないままとなっています。

<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
まずは今、ニュースでも触れた日本版改良藤田スケールについてです。突風の強さを6段階で示すもので、2016年4月から運用が始まりました。今回の牧之原の竜巻は、風速が約75メートルと推定されますので、この数字に当てはまりますよね。

そのため、JEF3という風に発表がされました。JEF3と認められたのは、国内では2例目で、1例目が沖縄だったので、本州では初ということになります。JEF4以上の事象というのはこれまでにないので、国内最大級だったと判断されたわけです。なぜこういう指標を使うのでしょうか。

<久留嶋怜気象予報士>
そもそも竜巻という現象は、10分程度を短時間で、そして100メートル程度の比較的小規模な現象ですので、風速計のあるところを通るということがほとんどないんです。仮に風速計のあるところを通ったとしても、竜巻の風があまりに強すぎて風速計が壊れてしまうため、観測ができないんです。

そのため、被害状況から風速を推定するという手段をとり、それが藤田スケールにあたります。今回の牧之原市の竜巻で、被害状況として鉄骨でできた建物の外壁が飛び散ったことが確認されました。そのため、それに該当するJEF3と認定され、風速が推定されたということです。

<滝澤キャスター>
被害状況から風速を推定する仕組みなんですね。そして、被災地では9日夜から雨が心配ですね。

<久留嶋気象予報士>
そうですね。9月10日の未明から雨が降る可能性が出てきています。詳しい雨の予想です。午前3時頃、牧之原市で雨が予想されています。

その後、朝にかけては雨はやんでいる予想となっているんですが、再び昼前になりますと雨雲が湧いてきて、牧之原市では午後になると雨雲がかかる予想となっています。吉田町のあたりでも、沿岸部を中心に雨が降ってくる可能性があります。

<滝澤キャスター>
被災地ではいろいろと準備を進めないといけないですね。

<久留嶋気象予報士>
そうですね。水に弱いものは対策をした方が安心です。