「こういうことになっても、自分のことを見てくれないのか」
Q.なぜ、クッションに火をつけた?
「なんで、両親はここまでしても自分のことに関心を持ってくれないんだろうか。自分の行動をなんで見てくれないんだろうか。そういうことを考えると、苛立ちが大きくなり、居間に行って椅子の上に置いてあったクッションに火をつけて関心を持ってもらおうと思いました」
Q.なぜ、火をつけるという行為になった?
「自分のことを叱ってほしかっただけです。注意してほしかっただけです」
火が広がり始めても、両親は気づかず、片づけを続けていたという。
Q.気づかない両親をどう思った?
「こういうことになっても、自分のことを見てくれないのかって苛立ちもありました」

両親の気を引きたい。
その一心で放った火は、両親と暮らしていた部屋を全焼し、父親の命をも奪ってしまった。父親が火災から逃げ遅れていることに気づいた男は、叫ぶように周囲の人に頼んだ。
「俺に水をかけてくれ。お父さんが中にいる」
火の中へ助けに戻ろうとしたが、近所の人に引き留められたという。
亡くなった父への気持ちを問われた男は、涙ながらに後悔を口にした。
「申し訳ない、苦しい思いをさせて申し訳ない」
裁判の審理を終える「結審」の日。検察側は「考えや生活態度が幼稚で自己中心的。動機は極めて短絡的かつ身勝手で、酌量の余地などまったくない」「人の死亡という重大で回復不能な被害が生じた」などとして懲役10年を求刑。
一方、弁護側は「自分を見てもらいたくて、気を引くために行ったものであり、両親や近隣住民を傷つけるつもりはなかった」「計画性・積極性はない、発作的・衝動的な行為で、強い犯意もない」などとして、執行猶予付きが相当であると主張した。