熱海土石流の原因究明を続けてきた静岡県熱海市議会の百条委員会は8月26日、最終回を迎えました。委員会は盛り土崩落に関する発言の食い違いを確認するため、改めて、斉藤栄市長や現在の土地所有者の元代理人ら5人に対して質問を行いました。
<廣田昭由記者>
「今年3月から開かれてきた百条委員会は、これまで誰も責任を認めないまま、きょう最終回を迎えました」
2021年7月に熱海市で発生した土石流災害を巡っては、強い調査権限を持つ熱海市議会の百条委員会が真相究明を続けてきました。
これまで盛り土の前と現在の土地所有者が崩落の責任を否定し、また、熱海市も静岡県にも責任があったとするなど、それぞれが責任を押し付けあう証言が展開されてきました。
26日の百条委員会は、こうした食い違いについて、確認するため開かれたもので、斉藤市長や現在の所有者の元代理人の男性らあわせて5人に対し、改めて参考人として質問しました。
斉藤市長は、これまで「崩落の責任について答える立場にない」としてきましたが、6月下旬に「被害者の会」と面会した際、「行政としてやるべきことができていなかった」と謝罪し、責任を認めたとも受け取れる発言をしていました。この点について問われた斉藤市長は。
<熱海市 斉藤栄市長>
「政治家としてこれだけ多くの方がお亡くなりになった。また大切な財産が失われたことについてお詫びを申し上げたということであります。それが法的にどうこうということとは別問題だと考えております」
斉藤市長は、盛り土の造成に際して、不備のある書類を受け取ったことは「至らなかった」と一部、責任を認めながらも、森林法の適用など、静岡県にも問題があったとのこれまでの主張を繰り返し、「法的責任は司法の判断にゆだねる」という考えを改めて示しました。
今回、もう一つ注目されたのが、現在の土地所有者が盛り土の危険性を認識していたか、という点です。現在の土地所有者は、これまで「盛り土があったという認識はなかった」と主張しているのに対して、当時、代理人を務めていた男性は。
<現土地所有者の元代理人>
「熱海市の担当者から崩落防止工事の可否について指摘がありましたので、会議終了後、現所有者にちゃんと資料を手渡して口頭でも説明しておりますから、当然、盛り土は認識してなければおかしいわけです」
元代理人の男性は、現在の土地所有者を盛り土周辺に「何度となく連れて行った」と発言しましたが、食い違いについて、すべて明らかになったとは言い難い状態です。
2022年3月から16回にわたって開かれてきた百条委員会はそれぞれが責任を押し付けあう構図に変化がないまま、今回で調査を終了しました。
<熱海市議会百条委 稲村千尋委員長>
「工事人と前所有者、現所有者、それぞれかみ合わない点が多々生じたのではないかと思っております。一番大事な市の対応ですけれども、やはり反省点をですね、しっかりと総括できれば」
百条委員会は内容を取りまとめ、11月議会の場で報告するとしています。