長野県松本市の高校には、3年生自らが企画し、運営する伝統の卒業式があります。
新型コロナに翻ろうされた高校3年間で出会ったのはかけがえのない仲間でした。
手作りの卒業式で、最後に伝えたかった思いとは。


松本市の松本美須々ケ丘(まつもとみすずがおか)高校。

卒業式を1週間後に控えた2月24日、およそ30人の生徒たちが集まりました。

「1時半からリハーサルを始めるので、自分の立ち位置に立つように」

3年生の有志で作る卒業式実行委員会のメンバーと、サポートにあたる下級生です。

(丸山慶悟さん)「ベルない?ないならないで大丈夫だよ」


舞台監督を務める3年生の丸山慶悟(まるやま・けいご)さん。
卒業生自らが企画、運営する「卒業式第2部」の台本を書き、総合演出を担当します。

生徒がつくる伝統の卒業式が始まったのは、今から30年前のことです。

演劇部ということもあって、舞台監督に抜てきされた丸山さん。

丸山さん「生徒会長たちも引き継ぎの場面になったら、準備始める」

別の生徒「始めるじゃ遅くない? いないといけない?」

リハーサルは思うように進みません。


(牧垣絆さん)「後輩からのVTRのメッセージは照明が落ち切ってからで大丈夫だよね」

実行委員の1人、3年生の牧垣絆(まきがき・きずな)さん。
学校生活を振り返る映像の制作を担当し、式で披露します。


舞台監督の丸山さんとは3年間同じクラスで過ごし、演劇部で苦楽をともにした親友です。

彼らが入学したのは3年前・2020年の4月。


新型コロナの感染拡大を受け、当時の安倍総理は4月7日、最初の緊急事態宣言を出しました。

1年生の春に訪れた、最初の試練です。

丸山さん「入学して次の日過ごしてその次の日も過ごして、休校です。それで終わりです」

牧垣さん「慣れない環境、慣れない人たちがいる中で、いきなり1か月休校って形になっちゃってクラスメイトの顔も分からないし」


その後も、制約のある学校生活が続きます。
3泊4日の予定だった修学旅行は、行き先が代わり、1泊に短縮。

2人が情熱を注いだ演劇も発表の場は限られました。

牧垣さん「お客さんにも見てもらえず、舞台でできないっていうのがやっぱりすごく悔しかったです」

丸山さん「全部コロナで制限されて、楽しそうだなって思ったことが全部できなくて」

誰もが経験したことのない逆境の中、
それでも手を取り合い、励ましあいながら…。

未来を信じて、仲間とともに、前を向いてきました。

丸山さん「こいつぐらいなんで。本当に一緒に遊び行ったりご飯いったりとかいろんなことするのは、本当にこいつだけなんで…本当にいい出会いだったと思う」


牧垣さん「生徒みんなで作り上げた卒業式なら、それはやっぱり大きな思い出になるんじゃないかと思って」