埋没腐植層で明らかになった新たなメカニズム
実際の研究に使った土壌断面および培養実験の様子【作成 新潟大学農学部 永野博彦助教 同大学院生 鈴木優里さん】
研究では、北海道大学苫小牧研究林や九州大学北海道演習林で採取した表層土壌と埋没腐植層(過去の火山灰堆積により下層へ埋没した過去の表層土壌)を対象に、降水パターンの変化に伴う乾湿繰り返しを模擬した条件で28日間の室内培養実験を行い、CO₂放出量の変化を評価しました。
主な成果は以下の通りです。
全ての土壌においてCO₂放出量は乾湿繰り返しにより増大し、土壌水分量が変化しない条件と比較して1.4〜4.8倍のCO₂放出量が確認されました。
微生物バイオマスに乏しい一方、活性金属-有機物錯体に富む埋没腐植層では、CO₂放出増大量が培養開始時の微生物バイオマスや培養中の微生物バイオマス減少量の約2倍に達しており、従来指摘されてきた「乾湿繰り返しに伴う微生物細胞の破壊由来の炭素供給」だけではCO₂放出増大を説明できないことが示されました。
埋没腐植層で活性金属-有機物錯体として存在する有機炭素量は、CO₂放出増大量の約90倍に達することも明らかになりました。
先行研究で見出された乾湿繰り返しによるCO₂放出増大率と土壌中の活性金属-有機物錯体量との正の相関は、今回の研究データを加えても成立しました。
これらの結果は、土壌有機炭素の重要な安定化機構として考えられてきた活性金属-有機物錯体成分が、乾湿繰り返しによって不安定な状態になることで、これまで分解を免れてきた有機炭素を新たに分解可能な炭素源として微生物に供給する可能性を示しています。
また、活性金属-有機物錯体成分の存在量が、乾湿繰り返しによるCO₂放出増大規模の予測因子になることも示唆されています。