「明日には『おかん、腹減った』と起きてくる」受け止めきれない現実

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必死の願いも虚しく、触れた肌から伝わってきたのは、あまりにも残酷な「死」の冷たさでした。

我が子が永遠に旅立ったことを少しずつ突きつけられる一方で、それでも「明日にはいつものように起きてくるのではないか」と現実を受け入れきれない、父親の切実な胸の内を明かします。

(堤 敏さん)
「息子は上半身を包帯で覆われて、顔と手首から先だけが出ているような感じでした。ガーゼのような素材でできた浴衣のようなものを着せられていました。胸の前で不自然に組まされた手は、外れないように包帯で縛られていました」

「私たち家族はみんな、搬送された病院でも、司法解剖が行われた病院でも、息子に声をかけて、話しかけて、名前を呼び続けました」

『将太、起きて。起きろよ。将太、帰るよ。帰ってご飯食べるよ』

「そういうふうに声をかけ続けました。手を縛っていた包帯をほどいて、その手を握って温もりを伝えたら、指を動かして握り返してくれるんじゃないのか、ほっぺたを温めたらにこっと笑ってくれるんじゃないか。手や顔を撫でたりさすったりしながら、一晩中話しかけて過ごしました」

「しかし、それは叶いませんでした。息子を触った瞬間、そのときはもう、生きているときの温もりはなくて、触った瞬間どきっとする独特の冷たさ、それだけが伝わってきました」

「それでもみんな息子に触り、声をかけ続けました。この夜が、私たち家族が息子の死というものを、きょうだいが弟の死というものを、将太の死というものを受け入れさせれられた時間だったのかなと思います」

「でも、明日になったら将太はいつものように起きてくるよ、明日になったら将太はいつものように

『おかん、腹減った』

と言って起きてくる、そんな気がしていました」

「その時点でも、現実として受け止めきれなかったのかもしれません。事件の知らせを受けたときから、葬儀までの間の期間っていうのは、まったく現実感のない、悪い夢の中にでもいるような感じでした」

「現場に駆けつけたときは、理解できずにいながらも、徐々に血の気が引いていくというのか、足が地についていない、ふわふわとした感触、膝がガクガクと震えてって内臓がぎゅっと締め付けられるような、言いようのない感覚で、そんな中なんにもできなかった。体縮こまって固まってっていうような感じです」

「名前を呼んで、呆然として、本当に何もできなくて」

終わりの見えない深い絶望の淵に突き落とされた家族。しかし、ここから犯行の全容解明と犯人逮捕までの「11年」というあまりにも長い闘いが始まります。

【連載第3話】へ続く