「漫画には省略されている部分があるからこそ、そこから想像して生まれる光景がある」

ー「つい昨日のできごと」の「漫画には、活字にはない迫力と省略があって、省略されている部分があるからこそ、そこから私が想像して生まれる光景、というものがある」という文章がとても印象に残りました。

(小手鞠るいさん)
「普段のわたしは、執筆のためにはまず活字の資料(紙の本が中心です)をあらかじめびっしりと揃えて、それらを読みながら、進めていくことが多いのですが、(もちろん、資料は最初から最後までゼロの作品もあります)父の漫画の場合には、漫画に出てこないことを想像する楽しみがあり、また漫画に出てこない場面を創作する楽しみもあったので、活字の資料からは得られない、貴重な体験だったと思っています」

「つい昨日のできごと」平凡社

(小手鞠るいさん)
「ちなみに、父の漫画は例外で、普段は、写真や映画や絵画などを執筆の資料にすることはほとんどないです。理由は、自分の自由な想像力を、具体像(絵や写真や漫画)によって限定されるような気がするからです」

「取材(インタビュー)も同様で、ほとんどしない方が書きやすいです。
あとは、とにかく活字の世界が好きで、こういった書き方が長年の習慣になっているせいかな(笑)」