災害に負けるもんかと地域を元気づけた和菓子店の最後の1日を見つめました。
いわみ商店 岩見欣吾さん
「きょう?さわやか。やることはやって、自分の思った通りにできたから 何も後悔はない」

人吉市にある「いわみ商店」
創業100年を超す和菓子店で、薄い米粉の生地でたっぷりの餡を包む「長万十」が名物です。

常連客
「味がいい。包みに書いてある通り人吉で一番美味しい万十」
岩見さんは、7月豪雨から2年の節目、そして自身の誕生日である7月4日に閉店を決めました。 閉店を知った客が殺到。整理券を配布して販売する事態に。
岩見さん
「昔食べた味が記憶に残っていて来てくれているのだろう。店としてはうれしい。それだけ昔も今も手を抜いていないということだから」

開店から30分で完売する日々が約1か月続き…迎えた7月4日、最後の営業日。通常より2時間早く仕込みを開始しました。

息子たちも手伝いに駆け付けました。

長男 正輝さん
「水害の前ぐらいから体がきついと言っていて、それでもずっとやってきて、それで あの水害があってとうとう辞める日が来るのかなと思っていたが『がんばるよと』…」
岩見さん
「災害に負けるもんかと。それから子どもたちが手伝ってくれて、2か月後に営業を始めた」

三男・知徳さん
「すごいですよね。私には真似できない」
岩見さん
「息子たちが学校を卒業する頃には『後は継がない』と言っていたから、自分の道を考えて進めと伝えていた。子どもたちに店の歴史を背負わせることを、自分が望まない」
早朝から次々に整理券を受け取りに常連客が訪れます。

整理券を求める客
「最後やけんね。寂しか~」
「ずっと来ていて、売り切ればかりだったから…」
丸万十は妻のえみ子さんが作ります。

妻・えみ子さん
「私はただついてきただけ。夫は一生懸命ですね。夫婦ともに体が限界。寂しいけれど、お客さまとの会話もできなくなるし。もうただ、きょうの日を無事に終わることですね」

最後の営業が始まりました。訪れた人からは閉店を惜しむ声が…
客
「さびしかですね。非常に人吉の歴史が 1つなくなってしまう」

最終日はいつもの1.5倍多く製造。開店後もできる限り製造を続けました。

そして、最後の1つを包み終え…
岩見さん
「無事終わりました」

100パックは開店から40分で完売しました。
最後の客
「何回も来て、買えなかったのでうれしかったです」

岩見さん
「今頃になってどっと疲れがきている」

岩見さん
「やることはやって、自分の思った通りできたから何も後悔はしない」

地域に愛された老舗は、約100年の歴史に幕を下ろしました。
