チーズと言うと風味を出すために熟成させるものですが、あえて熟成させず国内で高い評価を得ているチーズがあります。どんなチーズなのでしょうか。
タンクローリーが運んできたものは…搾りたての牛乳、何も手を加えられていない「生乳」です。

熊本県益城町にある「マース」では、県産の農産物を加工・販売しています。

この日、早朝から始まっていたのがチーズ作りです。しかも、普通のチーズではなく…
マース 後藤毅さん「フロマージュ・フレというチーズです」

固まりきれていない、まるでヨーグルトのような見た目。フランス語で「新鮮なチーズ」を意味する商品です。
チーズ特有の風味を出すため、製造工程で「熟成」を行うのが一般的ですが、フロマージュ・フレは熟成をさせない「生チーズ」です。
しかも、全国の生産者が集うコンテストでフレッシュチーズ部門の最優秀賞に輝いた絶品チーズなんです。
なんと材料は生乳のみ。

合志市の契約農家「石坂ファーム」で、24時間以内に搾乳した新鮮なものだけにこだわります。

全国でもいち早くオートメーション化を取り入れいるこの牧場。その1つが、中央の牛が自ら扉の中へ…すると自動で搾乳が始まります。

石坂ファーム 石坂優一 専務「24時間、牛が好きなタイミングでロボットに入って来て搾乳できる。ストレスもかかりませんし、負担がかからない分、質のいい生乳が生産できます」
管理を数値化して、高品質に生産された搾りたてのミルク。では、一体どのようにチーズになるのでしょうか?
再び、生チーズ作りを行う「マース」です。到着したばかりの生乳が加熱殺菌されています。

そこへ持ってきたものは「チーズを固める魔法の粉」

この「魔法の粉」とは「乳酸菌」のこと。待つこと約4時間、発酵が進み、少しずつ固まっていきます。実は、ここまではヨーグルトとほぼ同じ製造工程。この後が生チーズ作りにとって重要な作業なんです。
水分を抜くため、細かい網目にした「生チーズ専用の布」へと流し込みます。

続いて、冷蔵倉庫で保管。しばらくすると分量が半分以下に。

このときに出る水分。実は豊富な栄養を含む「ホエイ」。
棄てるのはもったいないと、生チーズに次ぐ新商品を現在、試作中です。

そして、生チーズ作りは終盤に。ふんわりとホイップ状にできあがっていますが…

後藤さん「袋で1日こして、さらにこし器で2度ごしして、なめらかなフロマージュ・フレを作っています」
生チーズで特にこだわっているのがなめらかな舌触り。そのためチーズとは思えない形状の容器で販売しているのです。

後藤さん「鮮度が命なので、できれば出来立ての状態で食べていただけたら美味しいと思います」
砂糖やはちみつをかけて食べるのが本場フランス流。クセがなく使い勝手がいい生チーズは、有名ホテルや洋食店でサラダなどに使われています。
自宅でも簡単にできるアレンジ料理をご紹介します。
その1 冷ややっこ風に醤油をかければ、発酵食品同士でうまみが引き立ちます。

その2 ピザ風のトーストも。食パンの片面全体に生チーズを塗り、その上に薄切りのタマネギとベーコンを乗せてトースターで5分ほど加熱。すると、フランスの郷土料理「タルトフランベ」の完成です。
濃厚なミルクのコクとベーコンの塩味、タマネギがアクセントになる美味しいトーストです。

益城で作る鮮度が命の「生チーズ」一度試してみてはいかがですか?