旧優生保護法を巡る国家賠償訴訟で、熊本地方裁判所が国に賠償命令です。
この裁判は旧優生保護法のもと、不妊手術を強制されたことは憲法違反だとして、渡邊 數美(わたなべ かずみ)さん(78)と県内の70代の女性が国にあわせて6600万円の損害賠償を求めているものです。
旧「優生保護法」は、1948年から1996年まで存在した法律で、遺伝性の疾患や知的障害がある人に対して医師の診断と都道府県の認定だけで、本人の同意なしに不妊手術を行えると規定されていました。
この旧優生保護法を巡って2018年1月に、宮城県の女性が全国で初めて国に損害賠償を求め裁判を起こし、その動きは全国へ。
県内では2018年6月に渡邊 數美さんが、西日本で初めて熊本地裁に提訴し、翌年には70代の女性もそれに続いていました。
渡邊 數美さん「今まで生きてきた証として、是は是、非は非として、提訴しないことには、この世に生を受けてきたことは意味がありません」
ただ、旧優生保護法をめぐる裁判は、診療記録が残っていないため手術を受けたことの証明と「損害賠償を請求できる20年という期間=除斥期間(じょせききかん)」をどう捉えるのかが大きな争点となっています。
宮城県の裁判では仙台地方裁判所が「旧優生保護法は憲法違反」としたものの、原告の請求は「除斥期間を過ぎている」として訴えを棄却しました。
このような中、迎えたきょうの判決で熊本地裁の中辻 雄一朗(なかつじ ゆういちろう)裁判長は旧優生保護法を「憲法違反」とし、注目された除斥期間に関しては「権利行使が困難な被害者に対して国が責任を免れることは正義・公平の理念に著しく反する」と指摘し適用を認めず、国にあわせて2200万円の支払いを命じました。
渡邊さん「自分がこういう体になったことをひた隠しにして定年まで勤めた。『生きてきて ああ、良かったな』というのが一番の気持ちです」
旧優生保護法を巡る国賠訴訟で賠償命令が出されるのは、東京と大阪の高裁判決に次いで3例目で、地方裁判所としては、初めてのことです。