スポーツでのケガがもとで車いす生活となった男性。社会とのつながりを求め、母親とオープンしたのがカフェでした。そのカフェが10周年を迎えた2022年12月、男性はある決断をしました。

車椅子で接客をする男性。カフェの店長・池上 輝(いけがみ ひかる)さん、33歳です。輝さんはほとんど身体を動かすことはできませんが、母親の助けも借りながら、料理を運んだり会話を楽しんだりして店を切り盛りしています。

池上 輝さん「ここは社会と繋がることができる場所だし、自分の居場所を作ってくれる本当に大事な場所です」

父親の影響で柔道をはじめた輝さんは「将来はオリンピック選手」と大きな夢を掲げ練習に励んできましたが、中学2年生の時にアクシデントに見舞われます。

練習中に脊髄を損傷し、首から下が完全に動かなくなってしまいました。

さん「自分の中にある柔道という核がなくなった時は、本当に自分の生きている意味が分からなくなって」

絶望の渕にいた輝さんの背中を押してくれたのが、母・雄子(ゆうこ)さんでした。

雄子さん「なぜ障害を持っただけで、健常者と差をつけられるのかという悔しさがあったし、車いすになっても普通に生活ができることを見せていこうと思ったので」

24時間介護が必要な輝さんと雄子さんの二人三脚が始まりました。

輝さんは、県内で初めてとなる口頭代筆で公立高校を受験し合格。さらに、大学受験には親子そろって挑戦しました。

雄子さん「一緒に勉強していきたいという思いがあり、思い切って一緒に受験することにして」

そして卒業後、輝さんの「居場所」に、とオープンしたのが「キラキラ・スマイルcafe」でした。

雄子さん「名前が輝で『輝く』なので。やっぱり笑顔が一番大事だから、そこにスマイルを入れて」

輝さんのためにとオープンしたはずのカフェは、いつしか店を訪れる人たちにとっても癒しの空間になっていたようです。

「お2人の人柄も大好きなので。私もあんな風になりたいというお2人なので」
「笑顔が絶えないですね。元気がもらえるような気がします」

たくさんの常連客に愛され笑顔の絶えないカフェでしたが、オープンから10年、輝さんは母親の身体を気遣い、ある決断をしました。