食べられるカビと食べられないカビ
ここで素朴な疑問が浮かびます。例えば、ミカンなどの柑橘類には、よく青っぽいカビや緑色のカビが生えてしまいます。これを見て「青カビといえば、ブルーチーズは青カビを利用した食品だから…これも食べて大丈夫なのでは?」と思ったことはないでしょうか。
前渕准教授「実は、ミカンに生える青カビも、チーズを作る青カビも、ペニシリンを作る青カビも、同じ『ペニシリウム属』という親戚同士なんです」

親戚なのに、扱いは天と地ほど違います。食べられるカビと食べられないカビ、その差はどこにあるのでしょうか。
前渕准教授「違いはシンプルで、人間にとって『利用価値があるか』、それとも『都合が悪いか』それだけです。人間が長い食経験の中で『これは食べて美味しい(発酵)』『これは具合が悪くなる(腐敗)』と分けてきただけなんです」
ここで先ほどの「カビ毒」が関係してきます。同じようにカビが代謝を行っても、発酵に使われるカビは人間にとって「有用な成分」を作り出し、逆に人間に害をなす「カビ毒」を作ってしまうものが、食べられないカビとして区別されているのです。

では、ミカンに生えたカビの色を見て「これはチーズと同じ青カビだから安全」と判断することはできるのでしょうか?
前渕准教授「絶対に無理です。見た目の色だけで、それが毒を作るカビか、無害なカビかを判断することは専門家でも不可能です」
素人が「この色のカビなら大丈夫」と判断して食べるのは、危険な賭けをするようなものです。絶対にやめましょう。












