■ 街角でコーヒーを配る男性 なぜ?
西川 昌徳さん「よかったら飲みませんか?コーヒー」

通りかかった人
「買えるんですか?」
西川さん
「(無料で)ふるまっているの。よかったら飲んでいきません?」

通りかかった人
「えー」
街なかで淹れたてのコーヒーを無料で配るのは、兵庫県出身の西川昌徳(にしかわ まさのり)さん。

西川さん
「フリーコーヒーといって、来た人にコーヒーをプレゼントする活動をしています」
西川さんが熊本にやってきたのは、2022年の春。
実は自転車で世界38か国を回る経験を持つ旅人でもあります。
西川さん
「20歳になる年に親友が事故で亡くなって…」
大きなショックを受けたと同時に、悔いのない人生を過ごしたいと、西川さんは大学卒業を機に、世界を回る旅を始めました。

時には強盗被害に遭ったことも。それでも自身が納得するまで旅を続けられたのは、現地で出会った多くの人たちが親身になって助けてくれたからでした。
西川さん
「人との関りを作れるようなものを旅のツールにしたい。そこで思いついたのがコーヒー」

2018年に帰国した西川さんは、当時から好きだったコーヒーを携え、日本でも自転車の旅を行います。1年をかけ、北海道から鹿児島までを縦断するフリーコーヒーの旅。

西川さん
「1つ面白かったのは都会でも田舎でも同じ。コーヒーのセットを広げて待っていたら、誰か来てくれて、気づいたら人の輪が生まれている」

現在、西川さんの拠点は熊本市。その理由は家族ができたからです。

西川さん
「妻の帆花(ほのか)と、妻の働いている学校の子どもたちが遊びに来てくれました」

教育関係の施設に勤務する帆花さんと、自転車旅の活動を通じて知り合い、2022年に結婚した新婚さんです。

西川さん
「これは小さい焙煎機なんですけど、世界に1つしなかい」
自転車の荷台に積める折り畳み式の特別仕様の焙煎器も。

無料で配ってはいても、その味に手抜きはしません。美味しいと思っているものをふるまいたい西川さん。東ティモール産の生の豆を煎るところから準備を始めます。

そして、準備が整うと、街に向かいます。

旅気分のままでいたいと、時間も場所も気分次第。

西川さん
「コーヒーどうですか~?」
京都から出張中の男性
「なんでタダなんですか?」

そう尋ねながら無料コーヒーを受け取ったのは、京都から出張で来ていた男性。
京都から出張中の男性
「時間があるんでちょっと街を散策していたら出会いました。紙のコップとはまた違う味がありました」

続いては…
通りかかった人
「僕バリスタなんですよ」

出会ったのはロンドン帰りのバリスタさん。さらに…
通りかかった人
「私たちは昨日種子島から」

いろんな場所からやって来た人たちが偶然居合わせてコーヒータイム。そして、西川さんは少しだけのおしゃべりを楽しみます。

中にはSNSをきっかけにしてやって来たという人の姿も。
熊本大学珈琲研究会 中尾慎太郎 会長
「コーヒーの自由さを体現している人。面白かったです。もっと話したい」

西川さん
「(1日の)目標は人?とか聞かれるけど、何人来たからいいではなくて、1人の人でもそれで和んでくれたり良かったと言ってくれたら、それが一番大事」

子どもたち
「こんにちは。無料でコーヒー配っています。1杯どうですか?」

別の日、西川さんは複数の子どもたちと一緒にフリーコーヒーを行っていました。

「オルタナティブスクール」という、子どもたちの自主性を重視した独自の教育カリキュラムを持つ学校と一緒に始めたプロジェクトです。講師としてサポートをする西川さん、子どもたちから「まさやん」と呼ばれ、親しまれています。

生徒
「もともと、まさやんが学校に来たんですよ。それでコーヒーに興味持って、やっていることも素敵だなと思ったから」

生徒たち
「乾杯」

生徒
「うまっ!」

西川さん
「お金に置き換えることではなくて、誰かの中に残せるものをまず自分でやること。それをもって生きられるならハッピー。やればやるほど、そこで生きている人の人生をおすそ分けしてもらった気がして、自分の世界が広くなる」
