アートの力で病院に癒しを届けたいと、およそ500人が参加した作品が完成しました。その「ホスピタルアート」と呼ばれる作品の制作現場を取材しました。

熊本大学病院でお披露目されたアート作品。


巨大なハートに熊本城、これは、絵具ではなくマスキングテープで作られた小さなハートの集合体です。


突然病院に現れたアートに対し、病院を訪れた人は…

来院者
「安らぐっていうか、すごく温かい感じになると思います」 


これは、徳島県のNPO法人の呼びかけで作られた「ホスピタルアート」と呼ばれる作品。無機質になりがちな病院に芸術を取り入れることで、患者や医療従事者に安らぎを感じてもらおうというものです。


熊本大学病院 馬場 秀夫 院長
「みんなで力を合わせることによって、患者さんの心を癒すことができればと思っています。ぜひ多くの方に見ていただきたいと思います」


熊大病院のホスピタルアートの制作が始まったのは、2022年9月。医療系の専門学校の学生およそ200人が参加しました。


リモートで制作の指導にあたるのは、アーティストの西村 公一(にしむら こういち)さんです。


アーティスト 西村 公一さん
「5つのテープを使って作っていきたいと思います」

マスキングテープを使い、縦横15センチほどの小さなハートを作っていきます。


使うテープは同じでも、貼り方や色使いによってそれぞれの個性・違いが出ます。


参加した学生
​「患者さんが少しでも元気で入院生活を過ごせるように、少しでも手助けできたらと思って作りました」


さらに10月には、地域の人も作品作りに参加。300人以上が思い思いのハートを表現しました。


参加者
「病院に長く入院している方もいらっしゃる、その人たちが元気になるように明るい色をメインに使った」


参加者
「やさしい感じを受け取ってくれたらうれしいです」

特別な技術を必要とせず、気軽に参加できるのがこのアート作品の特徴です。

西村さん
「大人も子どもも、みなさん柔らかい感じというかどこかやさしさを含んでいて、そういうものがでていると思います」


そして、これまで500人以上が手掛けた およそ900枚のハートが病院に届きました。これらを組み合わせて作品にしていきます。


壁に2メートル近くのハートをかたどり、これまで集めたハートで埋め尽くしていきます。


制作する中で西村さんがもっとも力を入れたのは、マスキングテープで表現する熊本城です。

実物の写真と照らし合わせながら作り上げていきます。


西村さん
「これで完成にします」


そして、病院での3日間にわたる制作を経て、作品が完成しました。


来院者
​「気持ちが落ち込んでみんな病院に来ている。気持ちが明るくなりますよ」


西村さん
​「頑張ろうという気持ちになれるようなものが作れたらいいなと思って作りました。病院のなかで『生きるアート』ができたと思う」