熊本県天草市の観光資源の1つであるイルカウォッチング。この夏、見に行ったという方も多いのではないでしょうか。そんな中、イルカや観光船を危険にさらしかねない行為が問題となっているようです。

記者
「天草市五和町の海上です。海を見ますと、本当に野生のイルカが泳いでいます」


天草と島原を隔てる早崎海狭には200頭近くのミナミバンドウイルカが生息しています。夏休み期間中の8月は、この野生のイルカを見ようと約3500人が訪れました。

そんな中…

記者
​「この野生のイルカを傷つけてしまうかもしれない行為があるということです」

それが、こちら。水上バイクがイルカが泳ぐ方向に近寄っていきます。大きな音楽を流しながら、かなり近いところまで近寄る水上バイクも。


天草市イルカウォッチング総合案内所 入江 一徳さん
「船と船の間を猛スピードで通ったり。イルカも慣れてないと思うんですよね」


もちろん、こうした危険運転をするのは一部のユーザーだけです。
RKKが取材したこの日も近くには水上バイクの姿がありましたが、危険運転は確認されませんでした。

記者
「きょうは平日、夏休みも終わったということで、ここから見ますと海に水上バイクはいないようです」

野生のイルカに近づく水上バイクが現れるのは天草だけなのか。全国8つのイルカウォッチング事業者に電話で話を聞きました。


東京・小笠原 父島の事業者
「小笠原では走っているのを見たのは私も含めてない」

高知・土佐の事業者
「そんなことはこっちではしていないですね」

-- 水上バイクは見たことないですか?
「ええ」

一方で…

石川・能登の事業者
「ありますよ、しょっちゅうですよ。身体にぶつからないかなとか、色んな事が危険だと思うので、そんな時は注意します」


石川県能登市や鹿児島県の錦江湾など天草と同様、内海にある3つのイルカウォッチング事業者は、イルカに近づく水上バイクを見た事があると話しました。

ただ、天草市の観光振興課は「安全が第一」とした上でジレンマも抱えています。

天草市観光振興課 松﨑 義史 課長
「イルカウォッチングは天草市の観光にとっては資源になっていますし、一方でマリンスポーツを楽しんでもらうことも天草の観光に重要」


マリンスポーツが盛んな地域の事例を見ると、兵庫県明石市は2021年の夏、水上バイクの悪質な運転が相次いだことから、今年から懲役を含む刑罰を科す条例を定めたほか、防犯カメラも設置しました。

天草市では9月20日に始まる定例市議会で、水上バイクの使用エリアを区切るなどマリンスポーツについて議論される見通しです。

天草市イルカウォッチング総合案内所 入江 さん
「イルカウォッチングにジェットスキーで来られると本当に事故が起きると思います。(このままでは)遅かれ早かれ何か起きると思うので、早めに条例など定めてもらいたいです」