◆3時間の「映像叙事詩」をもう1本観ることに
家に帰って喜んで妻に「よかった、よかった!」と伝えたところ、『ラストエンペラー』という映画の話になりました。(1987年、監督:ベルナルド・ベルトルッチ、伊・中・英・仏・米合作)。私はこれも観逃していたのですが、妻に「『覇王別姫』と両方観たら、中国の近現代史がすごくよく分かるよ」と言われて、ちょっと悔しい思いをしました。
ところがたまたま先週、NHKのBSプレミアムで『ラストエンペラー』が放送されていたのです。私はBSプレミアムを24時間録画しているので、手元に映像がありました。約3時間の『覇王別姫』を観たその日の夜に『ラストエンペラー』3時間。これも、素晴らしかったです。
やっぱり一大「叙事詩」でした。主人公は清国最後の皇帝で、1908年に3歳で即位した愛新覚羅溥儀。1967年までが描かれる、同じような超大河ドラマです。
当然ですが、日本軍が出てきます。戦争のことは、近現代中国史では考えざるを得ません。日本がどんなことをしていたのかも描かれています。『ラストエンペラー』では、満州映画協会の理事長となった甘粕正彦憲兵大尉を坂本龍一さんが演じています。アカデミー賞では9冠達成、音楽も担当した坂本さんは作曲賞を取っています。
◆映画が描く「時代の空気感」
両方の映画とも「物語」なので、細かく描かれたディテールが史実通りだったのかといえば、そうではありません。ただ、それよりも「時代の空気みたいなもの」が描かれているんじゃないかと思うんですよね。
「甘粕が映画の通りの人物だったかどうか」は、事実とは別。その当時の日本と中国、そして戦後中国の置かれた状況は、多分こんな空気感だったろうな、というのが両方の作品で描かれていました。本当に、映画はいいですね。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。
(写真クレジット)
KADOKAWA提供
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