◆小選挙区制以降の首相は12人中9人が世襲



これをきっかけに再び注目を集めているのが「国会議員の世襲問題」で、今回の本題はこれです。

まず岸田内閣。全閣僚20人のうち、妻の父も含めて父親が国会議員だった人が、首相を含めて8人。4割を占めます。ほかにも、夫や伯父など親族に国会議員経験者がいる人を含めると11人で半数を超えます。

首相に限ると世襲率はさらに高く、1996年に小選挙区制が導入されて以降の首相12人のうち、世襲でないのは菅直人、野田佳彦、菅義偉の3氏だけで、自民党に限れば菅義偉氏1人。ほかは全員世襲です。

また、衆院議員全体で見ると、全465人のうち102人が「父母や祖父母、または三親等内の親族に国会議員がいて、同じ選挙区から立候補して当選した」いわゆる世襲議員です。党派別では自民党が断トツで、261人中84人。3人に1人の割合で、この中には3世、4世議員も含まれます。


◆「親ガチャ」と重なり若者の政治離れを加速化



中でも最近話題になったのは、防衛大臣だった岸信夫氏の辞職に伴う4月の衆議院山口2区補欠選挙で当選した、岸氏の長男・信千世氏でした。選挙前に立ち上げたホームページに、曽祖父の岸信介氏やその弟の佐藤栄作氏、伯父の安倍晋三氏ら、首相経験者3人を含む国会議員6人が並ぶ家系図を載せて批判が相次ぎ、ホームページの閉鎖に追い込まれました。

そこへ加えて「首相公邸ファミリー忘年会」が明るみに出て、改めて世襲問題がクローズアップされたわけです。もちろん、世襲はそれ自体が悪いわけでなく、憲法も職業選択の自由を定めていますから、政治家の子供が政治家を目指すのも自由です。しかも選挙で当選するということは、有権者がその人を選んでいるわけですから、批判は当たらないという意見もあります。

ただ、世界的に見て日本の政治家の世襲率はかなり高く、朝日新聞が紹介したアメリカの研究者の調査では、タイやフィリピンなどに次いで世界で第4位。先進7か国では突出していて、イギリスの貴族院ですらおよそ1割です。しかも先ほど言ったように、首相に限れば小選挙区制導入以降の12人中9人、閣僚も近年は半数前後が世襲という、国際的にみればちょっと異様な状況です。これが、昨今の「格差社会」や、「親ガチャ」と言われるような格差の固定化と重なって映り、若者の政治離れを加速しているとも言われるわけです。