▼諸刃の剣? SNSで晩節を汚した北橋市長

北橋市長が選挙戦中に投稿し削除した書き込み 「事実誤認」と認める

違った意味でSNSの影響を感じさせられた選挙でもあった。選挙戦最終日に、津森氏を応援する北橋市長が「武内氏が自民党に推薦願を提出したものの、それが叶わなかった」「その頃から武内氏による北橋市政への批判が激しさを増す」と投稿。翌朝、削除した。自民党福岡県連は、武内氏から推薦願は出ていないと表明。武内氏の陣営は「この内容は事実無根で公職選挙法違反の疑いがある」として警察に相談している。
RKBが選挙後、初めて北九州市役所に登庁した北橋市長に確認したところ、「表現の仕方が適切ではなかったと遺憾に思っている」と回答。事実誤認を認めたが、武内氏に選挙戦で批判されたことに対する反論だと主張していた。ただ、反論と事実誤認は全く別の問題だ。選挙期間中に現職の市長が虚偽の内容をメッセージとして発するのはどうなのか? これまでの北橋市長のイメージを自ら壊す行為で、「晩節を汚した」と話す北九州市民もいた。

▼地元出身のアピールは有効なのか?

地元出身を強調していた清水宏晃氏(左)と津森洋介氏

今回の選挙戦でも、「地元出身」を強調する候補がいた。ただ、生まれた場所がどれほど重要なのだろうか? 去年行われた福岡市長選でも新人の候補が選挙カーの目立つところに「福岡市出身」と書いていた。福岡市のような人口流入が多い自治体で「市外出身」の市民に対して、何を訴えたかったのだろうか? 外からの目線を持つ人がその地域のさらなる発展につなげることもある。地元出身であることをことさら強調する候補は、他にアピールする点がないのかと疑問に感じた。


▼新市長はどのような「言葉」を発信するのか?

武内氏はこれから単身、巨大組織に乗り込む。さらに、今回の選挙で敵対した与野党の市議らと相見えることになる。ミイラ取りがミイラになる事例も多い。批判してきた北橋市政が直面してきた人口減や財政難、街の活性化などの難題に当事者として取り組むことになる。
成否を握る鍵となるのは、選挙戦の際に繰り返してきた「市民の声を聞く姿勢」と「発する言葉」にある。この姿勢を貫くことができるのか、厳しくチェックしていきたい。


【今林 隆史】
政治経済の取材を担当。2022年3月までJNNソウル特派員で、韓国の大統領選挙などを取材。第58次南極観測隊に同行。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。気象予報士として「選挙の風を読む」ことを目指す。