◆笑顔の松雄「あなた達は助かってください」

そして、成迫に続いて5人目に現れたのが、藤中松雄だった。松雄も笑顔だった。
<冬至堅太郎の日記 1950年4月5日水曜日>
〇五人目は藤中君これも笑顔で房の前にあらはれた
F「とうとう行きますよ仕方がないです」
T「どうせゆく先は一緒です。再会を楽しみにしていますよ。」
F「あなた達は助かって下さい」
T「いや、どうせやられます。元気でおゆきなさい」
F「ありがとうございます。じゃーー」
◆平然とした7人 死につくものの立派な態度

6人目は海軍の特攻隊、震洋隊の隊長として石垣島にいた幕田大尉。剣の腕を見込まれ、石垣島警備隊の井上乙彦司令に一人目の米兵の斬首役に指名された。特攻として出撃することはなく終戦を迎えたのに、戦犯として31歳で旅立つことになった。
<冬至堅太郎の日記 1950年4月5日水曜日>
〇六人目は幕田君 とぼけた顔をして
M「よう、行くからな」
T「元気でゆけよ」
M「うん」
T「さよなら」
M「ああ、さよなら」