福岡と大分の県境に位置する自然豊かな吉富町。九州で一番小さいこの町の浜辺から、突如として国産のアサリが消えた。その量は約450キロ。熊本で起きたアサリの産地偽装問題のあおりで、国産アサリは価格が高騰している。地元漁協は盗まれた可能性があるとして海上保安庁に被害届を出した。


大切なアサリが突如消え、漁協はパニック

「ここにアサリがあったはずが、ネットがない!ネットがない!と」(吉富漁協山本宗一組合長)
異変が起きたのは今年2月中旬のことだった。漁協によると、おととし沈めたはずのアサリのネットがなくなっていたのだ。去年12月上旬に点検した際はあったことから、2か月間のどこかで、町が特産品として育てたアサリは姿を消したことになる。

干潟の西側のネットが消失した一方、東側に沈めた分は無事だった。被害を免れたネットを見せてもらった。
「持ってみてごらん、重いから」(漁協組合長)
「重い、これ1人じゃ無理じゃないですか」(RKB下濱美有)

袋は1袋あたり約10キロある。記者が持ち上げてみると、水を含んだ土が入っているためかなり重い。さらに、干潟の周囲には高さ2メートルほどの防波堤があり、300袋を1人で運び出すのは至難の業だ。組織的な窃盗の可能性が浮上した。吉富漁協の山本宗一組合長は、冬は夜に干潮となるため、人目の少ない時間を狙ったと推測する。
アサリが狙われるわけ
吉富町の干潟から消えたアサリは、約3センチに育ち、国産品として流通できるサイズだった。アサリをめぐっては、去年、中国など外国産のアサリが「熊本産」と偽って販売されていたことが分かり問題となった。この余波で、国産アサリの価格が高騰している。

農水省のDNA調査によると、熊本産として販売されたアサリの97%に外国産が混入していた可能性がある。国はこの産地偽装問題を受けて、アサリの産地表示のルールを厳格化した。
山本組合長は、相場が上がったことで、目をつけられたと考えられている。