10月29日、国連の女性差別撤廃委員会は日本政府に対する勧告を含む最終見解を公表した。皇室典範の改正についても勧告を行ったことに対し、政府は抗議し削除を申し入れている。法学者の谷口真由美さんは11月4日に出演したRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で「日本だけが言われているわけではない、他国は改正など行っている」と政府の対応を批判した。
憲法の次に効力を持つ国際条約
先日も女性差別撤廃条約の委員会について、選択的夫婦別姓をテーマにした時に話しました。今回、勧告が出たということで改めて取り上げます。出された勧告についてもお話したいところはあるんですけど、まずは人権条約と委員会の仕組みからお伝えします。
そもそも国際人権条約とは何かというところから。第二次世界大戦後に誕生した国際連合は、ナチスドイツによるユダヤ人の大虐殺とか、日本も行ってきた深刻な人権蹂躙について、戦中までは内政干渉だから「人権侵害しても口出しできない」ということの反省に立って、国同士の取り決めとして「人権を守りましょう」ということを決めていったんですね。
日本国憲法も前文に「国際協調主義」というものを掲げています。また98条2項では「日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」ということが規定されているんです。
だから日本では、一番効力の強い法は憲法ですけど、その次にこの国際条約が来るんですね。その下に例えば選択的夫婦別姓などで問題になっている民法とか、刑法などがあるので、実は一般の法律よりも条約の方が効力は強いんですよ。
委員には日本人も…「勝手にやっている」は通用しない
どんな条約であっても「政府は啓発をしなきゃいけない」とか「ちゃんと守るようにあらゆる努力をしなきゃいけない」となっているんですけど、大体の人は知らないですよね。例えば主要な人権条約でいうと、人種差別撤廃条約、自由権規約、社会権規約、子供の権利条約、障害者の権利条約、女性差別撤廃条約、難民条約などがあるんですけど、基本的に日本は全部入っています。
なんで入っているかというと、日本も国際的な基準のところに入れてもらいたいからです。自分たちも人権を守る国だと思われたい、「名誉ある地位を占めたいと思う」と日本国憲法の前文に書いてあるんですけど、名誉ある地位を占めたいから入ったんです。
でも、入りっぱなしでそれがちゃんと実行されているかどうかを誰かに見てもらわないと不安じゃないですか。だから人権条約には人権条約委員会がそれぞれ出来ているんですね。例えば女性差別撤廃条約の場合は23人の委員がいます。
委員は日本を含む締約国の国民の中から選ばれて、個人の資格で活動します。今は日本から、亜細亜大学の秋月弘子教授が女性差別撤廃委員会の副委員長に選ばれています。その前は弁護士の林陽子さんが委員長をしたこともあります。
国は外務省などが「この人をお願いします」と言って推薦してメンバーになっているという経緯もあって、名誉ある地位を占めたいので、委員会の委員にも日本人に入ってほしいと思っているわけですよ。
他の条約委員会、子供の権利条約でも日本人はいっぱい入っているんです。各国から1人ずつしか入れませんが、そういうことになっているというのを考えると「こんなん勝手にやってるやろ」とは言えないようなものなんですね。