吉野幸代さん(50代)の意見陳述
吉野さんは聴覚障害のある両親のもと育ちました。自身も聴覚障害者で、現在は福岡市でろうあ相談員として働いています。
原告夫婦とも親交がある吉野さんは、小学1年の時、自身の父親が原告である夫から殴られているのを目撃しました。
きっかけは、父が原告の夫に対し言った「子供を作ったらいい」という一言だったといいます。
吉野さんは法廷で、「今になって初めて、原告が父を殴った理由が理解できた」と述べ、不妊手術を強制されても受け入れざるを得ず長い間声をあげることができなかった当時の社会背景と原告の気持ちを代弁しました。
吉野幸代さん(50代)
「原告が不妊手術を受けさせられたことに対する深い悔しさと他の人には言えないつらさが、その行動の背景にあったのではないか。そして現在も、多くの聴覚障害者が不妊手術の被害を訴えることができない現状にあります」
第1次福岡訴訟 福岡地裁は国に賠償命令
聴覚障害のある80代の夫婦(夫の死後は親族が訴訟を引き継ぐ)が旧優生保護法の下、夫が不妊手術を受けさせられたのは違憲だとして国に賠償を求めた裁判では、福岡地裁が、手術を「違憲」と認めました。
その上で、不法行為から20年を過ぎると損害賠償を求めることができなくなる「除斥期間」の規定を適用せず、国の責任を認めて約1600万円の賠償を命令しました。