憲法違反の「悪法」が隔離生活を強要した
5月12日午後、映画公開を記念したイベントが西南学院大学で開かれました。熊谷監督と対談したのは、ハンセン病訴訟の弁護団代表を務めた、福岡市の八尋光秀弁護士です。

※八尋光秀弁護士(西新共同法律事務所)
弁護士として患者の権利宣言運動に参加し、患者の権利法制定を提唱した。医療過誤訴訟、国賠訴訟、刑事冤罪弁護、精神科医療にかかわる患者隔離等、人命人権、人生被害をもたらす諸問題に取り組んできた。1998年よりらい予防法違憲国家賠償訴訟いわゆるハンセン病訴訟の弁護団代表となる。2001年熊本地裁での勝訴確定後も、ハンセン病問題の全面解決に向け、国との協議にあたる。2003年より薬害肝炎九州訴訟の弁護団代表となる。2008年薬害肝炎問題の全面解決を求めていわゆる薬害肝炎救済法を議員立法によって制定させるとともに、国との間で和解解決のための基本合意書を締結し、この問題の全面解決を図る。
八尋光秀弁護士:1人1人の人間が誇りを失わずに、絶望を繰り返しながら生きていく。「絶望ばかりしてられないよ」と、かづゑさんが言うところがね。かづゑさんのこの物語を見た時に私が思ったのは「私たちはどうするか」ということ。かづゑさんは、かづゑさんでやっていく。こういうことにしてしまった主権者の私たちは、どういうふうに反省して、同じような法律や政策をさせないようにできるのか、考えないと。他人事ではいけないなと思うんですよ。
熊谷博子監督:それもこれも、「らい予防法」という悪法があって、絶対隔離は法律で決められていたからそうなったんですよね。
八尋光秀弁護士:そうなんです。法律でやり始める前は、近くの人に優しい人も冷たい人も嫌がる人もいるけど、「いやいやそんなこと言ったってお前」って、10人のうち1人ぐらいは親しくできる人がいたわけです。ところが法律ができてしまうと、もう(療養所に)入れなくちゃいけないんだからと亡霊みたいになって、「一緒に」と思っている人の気持ちはもう絶対許されなくなる。法律とか制度とか政策以外は許さなくなっちゃう。「お前、ここで感染者をどうするんだ」「どんどんもうみんな(ハンセン病に)なるぞ」とか言われると、もうほとんど無抵抗状態になるじゃない。
「らい予防法」は1996年にやっと廃止されました。2019年には、安倍晋三総理大臣(当時)が全面的に謝罪しています。予防法は基本的人権の尊重を原則とした日本国憲法に違反していた、と。

現在も療養所は全国に14か所あり、現実的には「ハンセン病の後遺症がある障害者の特別養護老人ホーム」のような役割となり、800人以上が暮らしています。映画は、美しい島の四季を記録していますが、かづゑさんは「この島は不思議な島でねぇ。天国だし、地獄だしね」という言い方をしていました。