広島県福山市の国宝・明王院五重塔の本尊に当たる仏像の頭部から見つかった紙について明王院が調査結果を公表しました。

紙が見つかった仏像は明王院五重塔の本尊「木造弥勒菩薩坐像(もくぞう・みろくぼさつ・ざぞう)」です。ことし7月から福山市内で行っている修理で頭に紙が折りたたまれた状態で見つかり、9月から市が調査に乗り出していました。

仏像から出てきた紙は3種類。いずれの紙にも「釈迦如来(しゃか・にょらい)」「薬師如来(やくし・にょらい)」「地蔵菩薩(じぞう・ぼさつ)」の三体がスタンプのように墨をつけて押されていました。

このような仏の姿をかたどった紙は「印仏(いんぶつ)」と呼ばれ、国や県の重要文化財の仏像で見つかったのは県内で5例目になります。このうち、福山市の胎蔵寺で1347年に作られた仏像から見つかった「印仏」と彫り方が似ていることから明王院五重塔の仏像がこれまで1348年の制作と考えられてきたことを補うこととなりました。

調査に関わった福山市文化財保護審議会の濱田宣委員によりますと、三つの仏が並ぶ印仏は過去・現在・未来を表しているといいます。また見つかった紙には、書かれた年や名前などはありませんでした。五重塔が民衆による寄付で建てられたことから名前などを書かなかったとみられます。

明王院・片山尊之副住職
「(弥勒菩薩は)未来を司る仏様でございます。そこのところから発見されたといったところは、意味合いがあって、みなさんに対する問いかけでもあるのかな」

当時の民衆の願いや思いをうかがわせる発見になりました。