指先をマニキュアで彩るネイルアート。若い女性だけのものではありません。

高齢女性
「(似合ってますよ)そうですか。ありがとう、おかげさんで」

ネイルを楽しむのは、お年寄りたち。高齢者施設を訪問してお年寄りに元気と笑顔を届ける「福祉ネイル」が、介護や福祉の現場で注目されています。

福祉ネイリスト 中尾将吾 さん
「80歳でも90歳でも笑顔になってくれるし、元気になってくれる」

ツメを彩ることで高齢者に訪れる前向きな変化―。実は「認知症」にもプラスの影響が?! きょうの深掘りニュースディグ、「福祉ネイル」のチカラとは―。

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青山高治 キャスター
高齢者施設などに出向いて行う「福祉ネイル」。女性たちの一般的な「ネイルアート」とはちょっと違って、単なる美容目的でなく、お年寄りの心に前向きな変化をもたらすといわれています。

田村友里 キャスター
最近の研究では「認知症」に対する効果も期待されています。広島市で活動する「福祉ネイリスト」を取材しました。

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福祉ネイリスト 中尾将吾 さん(40)
「磯部さん、何色が好きですか? いつもいろんな色をしてもらっていますが」
磯部カズエさん(96)
「無地がええね」

広島市の 中尾将吾 さん。お年寄りにネイルアートを施す「福祉ネイリスト」です。「福祉ネイル」のポイントは、単なる美容にとどまらず「会話」や「スキンシップ」を大切にすること。その結果、▽お年寄りの笑顔が増える、▽気持ちが前向きになるといった効果があることが分かっています。

福祉ネイリスト 中尾将吾 さん
「もうちょっと先端を丸くしようか。あんまりとんがりすぎると危ないから」

「福祉ネイリスト」は日本保健福祉ネイリスト協会が認定する民間資格です。認定者は広島県内に約70人。中尾さんは資格を取るための認定校の講師でもあります。

教室では、▽ネイルの技術だけでなく、▽高齢者の心理についても教えます。会話の大切さも伝えています。

中尾さん
「ただツメの色がきれいになってよかっただけではなく、終わった後はたくさん話して楽しかったという思いも持っていただけるのが、ぼくは福祉ネイリストとしてあるべき姿だと」

この日、学んでいたのは病院勤務の20代の作業療法士と、50代の元医療事務の女性です。

受講生(作業療法士・20代)
「身だしなみから整えなくなって外へ出たくなくなり、しゃべる機会も減るし、意欲的なものも落ちてきて、認知症になっていくんだと、働いていて思う」

実の母親に認知症の症状が出てきたというこちらの女性―。母親が施設で「福祉ネイル」を受けたときの笑顔を見て、資格を取ろうと決めました。

受講生(元医療事務・50代)
「認知症の症状が初めてだったんで。家族もちょっと悩んでたんで、母はこれからどうなるのかと…。だけど福祉ネイルで毎日、笑顔が増えてきたので、すごいうれしくて。ネイルが若い人だけのものではなく、こういう効果があるなんてすごい」

福祉ネイリスト 中尾将吾 さん
「例えば自分で髪を整えるようになったり、服装も気にしてスカートを履くようになったり、お化粧して口紅を塗るようになったり。ぼくたちは福祉ネイルという形で携わっているが、その方の見た目が顕著に変わってくる」