島で暮らす人
「これがボーノというロバです。顔をのせて甘えるんですね」


ロバも穏やかな暮らしを送っているようです。ここは、瀬戸内海の岡村島(愛媛)。波が静かに時を刻み、きれいな空気が島全体を包んでいます。

きょうのテーマは、『移り住む理由がわかります! とびしま海道で静かに流れる島時間』。


梅雨はいったいどこへ行ってしまったのでしょうか? しばらく天気はよさそうです。こういう天気が続くと、夏のお出かけ情報も必要ではないかと…。そこで、きょうは、とびしま海道の岡村島を紹介したいと思います。


広島・​呉市の南東の7つの島を、7つの橋で飛び石のように結ぶのが、「とびしま海道」です。もっとも東にあるのが岡村島です。「とびしま海道」のうち、この島だけが広島ではなく、愛媛県今治市なんです。


映画『ドライブ・マイ・カー』のロケ地にもなった大崎下島のすぐ先です。岡村島には有名な観光地があるわけではないものの、静かに流れる島時間を過ごすことができます。


呉市川尻町からとびしま海道にかかる安芸灘大橋を渡り、自動車で一番東にある岡村島に向かいました。7つ目の橋・岡村大橋を境に愛媛県今治市になります。岡村島は1周が11キロ、人口はおよそ350人です。


島にあるカフェで開店の準備をしているのは、成田紫乃さんです。午前10時のオープンと同時にお客さんです。


訪れた人
「コロッケ1つ」「味はおいしいですよ。パンもおいしいし、みんな、楽しみに待っています」


尾道市からドライブでやって来たグループも立ち寄っていました。


パンや惣菜、スイーツなどはほとんど成田さんの手作りです。


まるせきカフェ 成田紫乃さん
「朝はけっこうバタバタします。パンも焼いて、お惣菜もつくって…」

つくっているのは、ひじき入りの出し巻き玉子です。


成田紫乃さん
「ここの島のひじきは、悪いくさみとか全然ないので、ほかの島の人が食べてもおいしいと言うくらい、すごくいいひじきです」


テーブルにはティータイムを過ごす近所の女性が集まっていました。みなさんは、成田さんの師匠でもあります。

成田紫乃さん
「わたしの知らない作り方をみなさんが教えてくれるし、『きょうはちょっと濃いかね。いらんこと言うようだけど』とか…」


近所の人
「(味が)悪かったら、いらんこと言うの」


成田さんと夫の晶彦さんは10年前、それぞれが今治市が募集した「地域おこし協力隊」のメンバーとして東京からやってきました。そして、3年の任期終了を機に結婚しました。


夫・成田晶彦さん
「初めて(岡村島に)来たときは明るい印象を受けた。もともと、楽園を見つけて移住しようと思って、日本全国のいろんな島に行って、最後にたどり着いたのがここだった」

成田紫乃さん
「ここに来るためだと、降りた瞬間に思って。住んでみたら(島の人たちと)親せきみたいになっています」


カフェは、島の憩いの場にしようと2人で改装しました。


成田紫乃さん
「汗びしょびしょになりなが2人でペンキを塗ったのが懐かしい。全然、関係ない近くの人がジュースやアイスを差し入れしてくれた」


晶彦さんに島で大好きなスポットに案内してもらいました。

夫・成田晶彦さん
「初めて、ここに来たときには、ここまで歩いて上がってきて、船が行き交うのを見て、2時間でも3時間でもいられるくらい、いい景色で」


展望台からは、松山市から来島海峡まで瀬戸内海が見渡せるそうです。


岡村島は、古くから海上交通の要衝で、江戸時代には潮待ちの港として栄えました。


島の南にある岬にはかつての灯台の跡があり、平安時代に立ち寄った空海が彫ったと伝わる仏像が安置されたお堂もあります。


夫・成田晶彦さん
「島の方がたお祭りがあるときにはここに集まって、ふるまいをしたり、行事が行われる」


成田さん夫婦には、ほかにも家族がいます。


夫・成田晶彦さん
「これがボーノというロバ。はい、ボーノ。顔をのせて甘えるんですよね」


ヤギの名前は「姫子」。犬は、足がごま塩模様なので「ごましお」。


小屋の中にはニワトリが60羽ほどいました。

「雑穀類と豆腐のおからが主食なので、すごくつやがよくて、元気に育っている」

ニワトリは小屋から出して、敷地内で遊ばせることもあるそうです。


「ニワトリのフンとロバのフンを配合すると、いいたい肥になる。その肥料をまいて、かんきつを作っている」


そして、ニワトリのたまごは、カフェで出し巻き玉子になり、ティラミスの材料になり、今治市のご当地グルメ「焼豚玉子飯」でも使われます。


海沿いを通るメインストリート、そこから住宅地に入ると懐かしさを感じる路地が続いていました。


時空をさかのぼり、そのまま時間が止まったかのようです。


ビーチの海は高い透明度でした。打ち寄せる波以外、あたりから音はほとんど聞こえてきません。


まるせきカフェ 成田紫乃さん
「この時間帯でもあまり車が通らず、都会から来て思ったのは、音がないことがこんなにぜいたくなことなのかと思った。空も海もきれいだが、自然の空気感や静かさが残っているのが、ここの魅力」


「とびしま海道」の岡村島。日常を忘れ、深呼吸をしに出かけてみてはいかがでしょうか。

― 島の人と成田さん夫婦の距離感がとても近く感じました。成田さんご夫婦が岡村島で結婚式を挙げたとき、島の人たちが集まって「瀬戸の花嫁」を合唱して祝福してくれたそうです。岡村島は橋で本土とつながっていますが、離島を旅するような気分が味えるのではないでしょうか。