豊作なのに浮かない表情 十分に作れない・作っても卸せない農家
三原市本郷町の竹之内昇さん(74)の田んぼでは、9月初旬には稲刈りが終わりかけていました。去年から始めた品種「ヒカリ新世紀」は、短期間で育つのが特徴です。

農家 竹之内昇さん
「うん、これが早く収穫できる品種で、遅く植えて、早く刈り取る。100日ぐらいで刈り取りできるからね。だから、(収穫期が)あとの人が水取れるよね」
今年のできは良かったそうです。
農家 竹之内昇さん
「えっと(たくさん)できてますよ、そうです。はい、大豊作」
「皆実ってね、いい粒になっとると思うよ」
それでも浮かない顔なのは、自分の田んぼの半分ほどしか、作付けできなかったからです。
農家 竹之内昇さん
「ほんとは作りたいよね。今、米がね、高いよ、言われるから、ほんま作りたいんじゃがね。まだ私がまだ元気なけんね」

竹之内さんの田んぼのすぐ上流にある、本郷最終処分場は、5年前に建設が許可され、3年前からゴミの搬入・埋め立てが始まりました。8月末までに埋め立てられたゴミは、7万3千トンに上ります。
この処分場の設置許可をめぐっては、5年前、住民らが、県に対し取り消しを求めて提訴し、2年前の地裁判決では、「県の判断の過程には看過できない過誤・欠落がある」として、取り消しが命じられました。
しかし、県の控訴により、裁判は今も続いています。
一方、処分場では、おととし6月以降、浸透水から基準値を超える水質汚染がこれまでに3回検出され、4回の行政指導で「汚染原因の究明」などが求められてきました。
住民らは、「毎回、原因が科学的に立証されないまま、県は、事業者の埋め立て再開を認めている」として、危機感を高めています。
農家 竹之内昇さん
「時々ですね、朝5時過ぎに行くんですが、泡がざーっと流れておるんですよ。環境がだんだん悪くなっております。川はもう川の機能はしていません。排水路になっています」
竹之内さんたち、日名内上地区では、2年前、川の水を田んぼに入れないことを決断。新たに設置した水路から上流の山水や別の谷の水を取水しています。しかし、こうした水で作られた米さえ、これまでのように農協には卸せないと言います。
農家 竹之内昇さん
「今、農協さん出されんのよね。やっぱり私が出したらね、知らん人はね、その(排水の混ざった川の)水を使ってやったと思われるからね。風評被害がね、また広がるから」
妻 竹之内容子さん
「せっかくおいしいね、お米を作ってきたのに、憤りはありますね。情けないですね。やっぱり。情けないですよ」

処分場から1.5km下流にある日名内下地区にも影響は広がっています。