窓や壁が破損しているなどして管理が不十分な状態の場合、「管理不全空き家」に指定され、固定資産税が最大で6倍になる改正法が施行されました。こうしたなか、様々な理由で空き家を管理できない所有者を支援しようと、民間企業による新しい事業が始まっています。
大分県中津市にある空き家。近くに住む上山潔さん(73)の実家です。この家で1人暮らしをしていた上山さんの母(97)は3年前に福祉施設に入所。いつ帰ってきてもいいように管理していますが、築100年の木造住宅は構造的に限界が近づきつつあります。
(上山潔さん)「まだ母親がいるから母親が一番さみしいだろうから、どれくらいもつかわからない。基礎的に無理なのでもう…」
全国で使用目的のない空き家は349万戸。この20年で1.9倍に増えています。解体が進まない背景には、土地に建物があれば固定資産税を最大6分の1に減免する優遇措置があるといわれています。
空家特措法では放置されている危険な「特定空き家」に対して固定資産税の優遇措置を解除していましたが、12月13日の法改正で「管理不全空き家」にも対象を拡大しました。
(中津市まちづくり推進課・上村隆則課長)「住宅用地の特例を解除されると特定空き家の場合と同様に、土地の固定資産税が3倍から6倍程度増えることになります」
中津市では固定資産税が増額される特定空き家は7戸でしたが、「管理不全空き家」を含めると520戸になります。最大6倍の増税を課す厳罰化と利活用や解体の支援事業の両輪で所有者に空き家の適正管理を促します。

(中津市まちづくり推進課・上村隆則課長)「定期的に空き家で草刈りや庭木の剪定、壊れた所を修繕してもらえれば特定空き家や管理不全空き家になることはないと考えています」
こうしたなか、民間企業「なかつ空き家管理サポート」は空き家を管理できない所有者の支援する事業を開始。もともとはし尿処理の会社で高齢世帯とやりとりをするなかで、空き家という社会問題に直面したのがきっかけです。
(なかつ空き家管理サポート原彩乃社長)「何十年もつきあいがあったので亡くなるのを間近でみてきた。なにかそこからでも力になれないかと思ったことがきっかけになります」
この事業の目玉の一つが「管理不全空き家」を未然に防ぐための代行サービスです。空き家を管理する定額プランでは月1回、簡易的な清掃に加え、建物や敷地に異常がないか点検します。また、庭木の剪定や不用品の撤去、解体の相談まで所有者の希望に対応する幅広いオプションも用意されています。
(空き家を購入した男性)「1人ではちょっとできないですね。庭先の草だったり、裏に行ったら竹も生えたりしているので。けっこうまだ前の住人の私物が残っている状態だったので、分別や撤去作業もお願いしたい」

(なかつ空き家管理サポート・原彩乃社長)「目的があって残しているのであれば、それはそれでいいと思っている。ただ放置されていて考えを先延ばしにしている人、なんとかしないといけないけど動けていない人に対して、1人でなく味方がいるという支えになりたい」
費用や負担が重くのしかかる空き家の管理。法改正をきっかけに活用や解体も含めて対策を見つめ直す時期に来ています。