急激な物価高騰を受けて高まっているのが“賃上げ”への機運です。大企業では実現の動きがみられる中、大分県内の動向を取材しました。
大分市で採れたての新鮮野菜が安く買えると話題の「川野駅 宗麟大橋店」。様々なものの値段が上がる中、『少しでも良いものを安く…』と多くの買い物客が品定めをしていました。
(来店客)「値段はこっちの方が安い、普通のスーパーより」「きつい、年金生活だから少しでも安い方が良い」
物価上昇の中、いま高まっているのが賃上げへの期待感。大分県内でいち早く実現に動いた企業があります。
(ジェイリース・中島土副社長)「思い切りました。世の中の流れにのっとって、このような制度を実現できた」
家賃保証サービスを展開する大分市の「ジェイリース」。来年度から新たな報酬制度を導入し、社員の年収を引き上げることを決めました。その上げ幅、平均でおよそ16%。例えば新入社員の初任給でみると、現在の21万8000円が4月以降は26万1000円と、4万円以上アップするのです。

(社員)「率直にうれしいという気持ち。特に家族が喜ぶと思う」「給料が上がるということは経費も増えるし、それを賄うだけの利益を出さないといけないので、うれしい反面、責任感も感じる」
(ジェイリース・中島土副社長)「働く人たちが喜びを感じながらより仕事に邁進することができれば社会にもっと貢献できる。優秀な人材にも入社してもらえるように環境を整えた」
賃上げをめぐって、連合の新年交歓会に出席した岸田総理は「ぜひインフレ率を超える賃上げが実現できるようお願いし、政府としてもその取り組みを後押ししていきたい」と述べました。年明け以降、政府は経済界に物価上昇率を超える賃上げの要請を本格化。また、経団連も企業の社会的な責務として賃上げに積極的な対応を呼びかけていく方針を示しています。
こうした流れを受けて「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは正社員の年収を最大で40%引き上げると発表。このほかにも大企業を中心にこの春賃上げが行われます。
賃上げ実現に必要なのが元手となる資金。ジェイリースではこの報酬制度の導入で人件費が新たに3億円増えるとのことですが、テナントや事務所向け賃貸保証の売り上げが伸びた分を充てることにしています。
(ジェイリース・中島土副社長)「決してコストではなく投資だと考えている。超大企業だけではなく多くの企業からもサンドイッチで人への投資が広がれば、もっと良い社会になるのでは」
しかし、中小企業が99.9%を占める県内経済。実現には厳しい見方が広がっています。
(大分商工会議所中小企業相談部・穴井壯志部長)「経営者・事業主も本音は賃上げをしたいが、原料の高騰によって非常に圧迫され、賃上げの原資が出てこないのが実情。賃上げできないのが本当のところ」
大分商工会議所が大分市内にある222社に賃上げについて聞いたところ、1年以内に「実施する」と答えたのは11.8%。「検討中」は26.2%でした。

(大分商工会議所中小企業相談部・穴井壯志部長)「市場の活性化を図ってほしい。具体的にはGoToやプレミアム商品券など広げるような政策。オール日本で賃上げにつなげていけるような取り組みをしていく必要がある」
地方経済にコロナ禍の打撃が続く中、県内で賃上げの動きがどこまで広がるのか注目の春を迎えます。