大分県北部にある姫島村。瀬戸内海西端に位置する離島で人口は約1800人(高齢化率56.2%)。基幹産業は水産業で、なかでも車エビの養殖が盛んに行われている。毎年、お盆の時期に開催される「姫島盆踊り」では、キツネにふんした子どもたちが可愛らしい踊りを披露し、多くの見物客を楽しませている。また、1000キロ以上を旅するチョウ「アサギマダラ」の国内有数の休息地として知られている。

のんびりと田舎暮らしを楽しみたい人におすすめの島だが、いまある変化が起きている。それは村が2018年に打ち出した「ITアイランド構想」。IT企業の本社進出などにより村が様変わりしている。

年商5億4000万円 村の産業額が2倍に

姫島村の中心部にあるIT企業「Ruby開発」。2018年に姫島オフィスを構え、4年後の今年2月、東京にあった本社を姫島村に移転した。「東京、仙台、福岡など各オフィスに誰がいるのかオンラインですぐにわかるようにしている。どちらかというと姫島に一番人が集まっているんですよ」(Ruby開発・天辰幸洋姫島本社長)

Ruby開発 姫島本社

Ruby開発はこの4年間で姫島オフィスの社員を1人から7人に増やしていて、今後さらに5人増員する予定。年間の売上高は5億4000万円で、島の主要産業である車エビの養殖に匹敵する金額に達した。

「おそらく島の産業の売り上げ高が倍になっていると思う。そこがまず最初の貢献だった。島最大の企業という思いで事業をもっと拡大していきたい」(Ruby開発・芦田秀之社長)

また、福利厚生も充実させている。オフィスの近くにある住宅を購入し、県外勤務の社員が宿泊できる施設を整備。社員同士が気軽に交流を深める拠点としても利用している。社員からの評判も上々だ。「土曜日に天気が良かったから庭でバーベキューをしていたら通りすがりのおばちゃんから食べるかと言ってタマネギをくれた」「姫島の暮らしが好きで、家族と一緒に過ごせる時間が増えた」。なかにはUターン就職した村出身の社員もいる。

次なる一手は人材育成 大手メーカー出身者を校長に採用

村ではこれまでにRuby開発を含めて、3つの企業や団体を誘致。また、姫島進出をお試しできる施設も整備していて、藤本昭夫村長はIT産業を集積することで、人口の増加につなげていく考えだ。

「人を増やすにはIT企業を呼び込んで社員を増やしてもらう。今はITの技術者が不足しているという話も聞いているので、村から技術者が増えるような形にしていきたい」(藤本昭夫村長)

姫島村 藤本昭夫村長

その技術者を育むために欠かせない教育現場…。4月1日、姫島小学校に民間校長として大手電気機器メーカーに勤務していた矢部英明さんを採用した。矢部さんはIT部門の本部長を務めていた経歴をもつ逸材。校長に就任してからは子どもたちの情報発信能力の向上がさらなる学びにつながると考えている。

「ITを道具として自分たちがやった学びや研究を外に発信する。姫島の子どもが全国の子どもとつながって会話ができるようしたい」(姫島小学校・矢部英明校長)

産業面の大きな実績と新たな教育人材を手にした姫島村。5年目を迎えるITアイランド構想がさらに前進しそうだ。