12月8日・9日と2日間にわたって長崎市で行われた“核兵器のない世界”に向けた『国際賢人会議』
核軍縮のキーマンと呼ばれる委員たちは、異なる立場と考え方を抱えながらも、「長崎を最後の被爆地にすべき」という点については、合意しました。
どんな議論が行われたのでしょうか。

熊本県立大学 理事長 白石隆 座長:
「The Nagasaki must be the last place(長崎を最後の被爆地にしなければならない)」

岸田文雄 総理大臣:「長崎を最後の被爆地に」

岸田総理が立ち上げ、去年スタートを切った『国際賢人会議』
”核兵器国” と “非核兵器国” 双方の国を含む有識者が知恵を出し合い「核兵器のない世界」への現実的な道筋を探っているもので、今回が3回目の会合でした。

岸田総理は、政治資金問題が渦巻く中で、閉会セッションに出席し、この問題への積極姿勢を改めて示した形です。

城山小学校 原爆殉難者慰霊会 本田魂会長(総理と数分間面会):
「(岸田総理は)ただ通り過ぎて お願いしますって感じでした」

「率直に しかし議論は冷静に行われた」

ロシア・アメリカ・中国など核兵器を持つ国、日本など「核の傘」の下にある国、
そして、核兵器を持たない国 ──あわせて12ヵ国から15人が委員をつとめています。

▼安全保障環境の悪化
▼AIなど新興技術が及ぼす影響
▼核の倫理的問題の3つを柱に、政治のリーダーシップに求めるべきものは何か──議論が行われました。

長崎被災協 田中重光 会長:
「(日本政府は)言葉では、“核兵器を無くせ“と言いますけど、しかし その行動は ”核保有国の立場”に立っていると私達は思っています」

被爆者から声が上がった『核抑止論』への反発、90歳で英語を学び始めた 築城昭平さんの『被爆証言』、被爆体験の継承に取り組む『若者たちの思い』にも触れた委員たち──。

熊本県立大学 理事長 白石隆 座長:
「メンバーは、全員個人(の立場)で出席していますので、率直だけれど、冷静に議論が行われました」

会議後の会見では、自国の安全のために核兵器は必要だとする『核抑止』の考え方について「色んな議論があった」と報告されました。

アメリカ カーネギー 国際平和財団 副会長 ジョージ・パーコビッチ委員:
「『核抑止力』を持つこと、持たないこと、どちらにも危険性がある。このグループはある意味でそれを反映していると思います」

フランス 戦略研究所 副所長 ブルーノ・テルトレ委員:
「ご存知の通り私は『核抑止力』の支持者です。でもそれは “一時的な手段” その場しのぎであるべきだという事実は、常に念頭に置いています」

アメリカ カーネギー 国際平和財団 シニアフェロー 趙通 委員:
「日本のように安全保障を依然してと『核抑止力』に依存している国は、これは
“一時的な解決策“であるというメッセージを世界に発信することが、特に重要だと思います」

異なる立場、異なる考え方を持つ委員たち──しかし『長崎を最後の被爆地にすべき』という訴えについては、今回の議論の中で大きな合意があったと報告され、会見でも、委員の多くが被爆地の影響力と責任に言及しました。

長崎で「核兵器なき世界」への思いを新たに

ドイツ 元国連事務次長 兼 国連軍縮担当上級代表 アンゲラ・ケイン委員:
「長崎市の平和公園に毎年60万人来ていると聞きました。私はその10倍になってほしい。長崎の平和公園に行って 初めてこのようなことは二度とあってはならないと理解できるからです」

インドネシア 元外務大臣 マルティナ・ナダレガワ委員:
「長崎に来たことで、元気が沸いてきたように感じています。平和のために積極的に取り組んでいく決意です」

ロシア エネルギー 安全保障研究センター長 アントン・フロプコフ委員:
「長崎の原爆資料館が改修される2025年に ぜひまた長崎に来たいと思っています」

ウクライナやガザで軍事衝突が続く中、賢人たちは「核兵器なき世界」への道筋をどう示すのか?
そして日本政府は政策にどう反映させるのか?
会議の成果文書は、2026年のNPT再検討会議に日本政府から提案されることになっており、今後も年2回ペースで議論が続きます。