長崎県の諫早湾干拓事業で2010年に確定していた開門を命じる判決をめぐり、これの効力をなくすよう命じた去年3月の福岡高裁判決が1日付で確定しました。
これにより開門確定判決は効力を失うことになりました。

最高裁が1日付けで漁業者側の上告を退けたもので、『開門する』『しない』で矛盾する確定判決が存在した司法のねじれはなくなり、『開門しない』方向に統一されました。

諫早湾は干拓事業で1997年に閉め切られましたが、その後、有明海のノリの不作などが問題になりました。

“漁業者側”は排水門を開くよう求める訴訟を起こし、2010年に『開門する』判決が確定しました。

しかし、開門すると干拓地で塩害がでる懸念があり“農業者ら”が提訴した開門差し止めを求める訴訟での『開門しない』判決も確定しました。

開門する・しない──矛盾する確定判決が存在した “司法のねじれ状態”

国がその後、起こした『 “開門する確定判決” の効力をなくす』よう求めた裁判で、2022年3月、福岡高裁は──
「漁業への影響は軽減した一方、防災などの面で潮受け堤防の閉め切りの公共性は増大した」として、“開門命令の無効化” つまり『開門しない』判決を言い渡します。

漁業者側は上告して争っていましたが、最高裁は上告審として受理せず、判決について判断を示さないまま上告を退ける決定をしました。

野村 農水大臣:
「今後は関係者の皆様が、平穏な環境のもとで 積み重ねられた司法判断と最新の科学的知見に基づき、有明海の未来を見据えた話し合いを行い、有明海再生の方策を共同として実施していくべき」

司法判断統一で…漁業者「残念」大石知事「開門によらない再生目指す」

判決の確定を受け、開門を求める漁業者、松本 正明さんは「残念で悔しい。魚がとれなくなった原因を調べるには開門調査しかない中で、国は有明海をどうやって再生するつもりなのか問いただしたい」とコメントしています。

今回の決定で『司法のねじれ』は解消し、今ある司法判断は『開門しない』方向に統一されることになりましたが、有明海の漁業再生への課題は残されたままとなっており、今後の漁業者側の動きが注目されます。

司法判断が『開門しない』に統一されたこと受けて大石長崎県知事は「今後、司法判断に沿って “開門によらない真の有明海再生” を目指していただきたい」とコメントしています。