
【平】長崎経済研究所が去年11月に行ったアンケートでも、回答した県内企業78社のうち、およそ6割が“事業承継”は経営上の課題であると答えています。
増えつつある“脱ファミリー化”
【住】中小企業というと親族経営が多いイメージもありますが、“家族に継がせるのが当たり前” という時代ではなくなってきているということでしょうか。

【平】そうですね。帝国データバンクが過去5年間における県内の事業承継について“先代経営者との関係性”を調べたところ、一番多かったのはやはり“同族承継”となっているのですが、去年は“同族承継”の割合が下がって“内部昇格”と“外部招聘”の割合が上がっているのが分かります。

つまり『脱ファミリー化』が進んでいると受け取ることができます。
実際に支援センターの仲介で親族以外に経営を託した事例を取材しました。
個人経営旅館がカフェや洋室を備えた新たな宿泊施設に

長崎市上町に去年6月にオープンした『和みの宿おりがみ』は、かつて『ふじわら旅館』として30年近く営業していましたが、代表をつとめていた藤原 勇さん(83)は、コロナ禍を機に3年前一線を退くことを決意しました。

ふじわら旅館元代表・藤原 勇さん(83):
「わしがこの店(旅館)をやりだしてからほとんど一人でしとりましたもんで、子どもは他所に行ったまんまですから、その延長でもってセンターさんにお願いして」

事業を引き継いだのは、長崎市内でアイリッシュパブなどを経営する (株)The Little Brown Jug の熊井 英哲(40)代表取締役です。

和みの宿おりがみ・熊井 英哲さん(40):
「旅館の中を案内してもらうときも“すごく愛情がある旅館”なんだなというのを感じられて、その旅館をうちの会社が引き継いでいけたらいいなと思いました」


もともと宿泊業に関心があったという熊井さんの手で、純和風だった旅館はカフェや洋室を備えた新たな宿泊施設に生まれ変わりました。
熊井 英哲さん:
「カフェの空間を作ったり洋室を作ったりしたんですけど、本当に意識したところは、“藤原社長が築き上げてきた基盤”をちゃんと引き継いでいくっていうことですね」

藤原 勇さん:
「若者たちの考え方が、かなりわしらの時代とは変わっとりますから、今度は熊井さんがきちっとこういう整理をされたことはいいことだと思いますけどね。
がんばって残してほしいと思っとりますけどね」
【住】結婚と似ているなと感じます。お互いの思いが上手くマッチングできた良い事例だと思いました。
自分だけでは巡り合えない“後継者に出会える”というのも事業承継・引継ぎ支援センターのメリットの一つかなと感じました。