子どもが友達と喧嘩をしたと聞くと、親としてはつい気になってしまうものです。どこまで話を聞くべきか、どこまで介入するべきか、悩んだ経験がある人も多いのではないでしょうか。
NBCラジオ「あさかラ」の「子どもの健康相談室」には、小学5年生の男の子を持つ保護者からこんな相談が寄せられました。

「小学5年生の男子です。友達と喧嘩した話を聞くと、つい、介入したくなります。何と言われたのか、どう対処したのか。もちろん我が子が人様に迷惑をかけないように、と思うのですが、逆にひどい言葉をかけられていたら、と思うと心配です。過保護すぎると思いますか?」
長崎市のやなぎクリニック・栁忠宏医師は、この切実な悩みに「そう、難しいですよね。本当に親なら誰もが思うことで、『何があったの?』という気持ちになりますよね」と話します。
聞き手の菊野紗史さんも、親としての実感を語ります。
「『ただいまあ』って帰ってきた時の声のトーンや表情で、『あら、今日は何かあったばいね』と思うことがあります。でも、そこで『何かあったと?』『言うてごらん』と聞くと、子どもはきついかなと思うんです。だから最初は黙って『お帰り』と言って、『どうしたかな?』という顔で様子を見るようにしています」
栁先生が「すごい。それ、よく見てらっしゃいますね」と言葉を返すと、菊野さんは「明らかに子どもってなんか違いますもんね」と、我が子の変化を捉える親の視点について語りました。
これに対し栁先生は、「意外と分からないこともあるんですよ。私が帰宅して、妻から『(子どもの様子が)今日ちょっと様子が違うのよね』と言われて初めて気付くこともあります。僕自身、最初は気付かないこともありました」と、自身の家庭での実感を明かしました。
そのうえで栁先生は、友達同士の喧嘩に直面した際の親の関わり方について、「喧嘩は成長の一部」「大人が介入すべき場合もある」「親は解決者ではなく相談役」の3つのポイントを挙げました。
1.喧嘩は成長の一部。意見をぶつけ合う大切な時期
1つ目のポイントとして、栁先生は「喧嘩は成長の一部である」という見方を示します。
「5年生になると、喧嘩することは決して悪いことではありません。みんなそれぞれ考えがあり、人間関係の中でぶつかることもあります。意見をぶつけ合わないと生まれないものもありますし、仲直りをしながら人との付き合い方を学んでいく時期でもあると思います」
大人が聞くと「そのくらい」と思えるような意見の食い違いであっても、本人なりに解決する経験を積むことが、これからのコミュニケーション力に繋がっていくと言います。
2.暴力やSNSトラブルは別問題。大人が介入すべきケースも
一方で、2つ目のポイントとして、栁先生は「大人が放っておけない明確な境界線」を挙げます。
「一方で、本当に大変なケースもあります。暴力があったり、物を壊されたり、継続的に仲間外れにされたりする場合です。今であれば、SNSで本人だけが標的にされるようなケースもあります。
学校に行きたくないほど苦しんでいる場合は、もはや単なる喧嘩ではありません。その場合は子どもと一緒に考えながら、学校にも相談していく必要があります」
苦しんでいる本人を問い詰めることはせず、少しずつ色々と話せる状況を作ることが大切になると話します。
3.上空から先回りして降りてくる「ヘリコプターペアレント」
3つ目のポイントとして栁先生は、親の心の置き場所について語り、ある現代的な言葉を紹介しました。
「最近ですね、ヘリコプターペアレントっていう言葉があるんですよね」
菊野さんが「ヘリコプターペアレント?」と反応すると、先生は説明を続けます。
「ヘリコプターのように上空から見守り、何か問題が起きるとすぐ降りてきて解決しようとする。そんなイメージです。
社会的な交流も含めて、生活のあらゆる面において、お子さんを監視してて。なにかあるとすぐ手助けして問題解決しようとする保護者のことです」。
親が先回りして問題をすべて解決してしまうと、子どもが「自分で解決する能力」が減ってしまうと先生は指摘します。
「問題を解決する主体は子ども本人です。その挑戦を支えることが、親の大切な役割だと思います」
4.「先生には言わないで」 子どもにも触れてほしくない領域がある
話が親子の距離感に及ぶと、菊野さんは自身のリアルな過去の体験談を明かしました。

子どもから相談を受けた際、「そこからは聞かないで」というゾーンや、「聞いてほしい事実」と「もうこの先は聞かずにそっとしておいてほしい事実」があるのではないか、と菊野さんは指摘します。
菊野さんは、かつて子どもから「学校の先生に相談してみたらどう?」と提案した際、「先生には言わないで」と言われた経験を紹介しました。
「でも、私はこれは先生の耳に入れておくべきことだなと思って、先生にちょっと、ご相談したことがあって。
で、先生が『子どもに話しましょうか?』って言ったので、『いや、先生、子どもには話さなくていいです』って。(子どもと)“先生には言わない”って約束したので。先生には一応、ちょっとご報告をしましたって。
そこでそれぞれの信頼関係が、いろいろ崩れてしまわないようにって。話をしておくって大事だなと」
学校への情報共有と、子どもとの約束の双方を意識した対応だったといいます。栁先生もこれに応じ、子どもの心理を解説します。
「どちらの場合も、自分が嫌な思いをした時や、無意識のうちに相手を傷つけてしまった時には、『触れてほしくない領域』があると思うんです。
その気持ちを落ち着いて見つめ直し、誰かに相談するのか、相手に謝るのかを自分で考えられるようになる。そうした経験を重ねていくことも成長なのかなと思います」
親は「解決者」ではなく「相談役」
子ども同士の喧嘩にどこまで関わるべきか。「難しい。本当に難しいです」と菊野さん。
それに対し栁先生は、
「小学校でも中学校でも、高校でも大学でも、そして社会人になってからも、人間関係は難しいものです。これからも一緒に考えていきましょう」
と語りました。
栁先生は、子ども自身が考え行動する過程を支えながら、必要な場面では大人が介入することが重要だと指摘します。そのうえで、親は問題を先回りして解決するのではなく、「解決者」ではなく「相談役」として寄り添うことが大切だと話しました。
NBCラジオ『あさかラ』内「子どもの健康相談室」(2026年6月24日放送回)より








