長崎県五島市にある世界文化遺産の島・久賀島(ひさかじま)の森林を守るため、二酸化炭素(CO2)の吸収量を企業に販売して収益化する新たなプロジェクトが始動しました。

五島市は20日、都内の環境ベンチャー「アイフォレスト株式会社(以下、アイフォレスト)」や「ヤマハ発動機株式会社(以下、ヤマハ発動機)」、「株式会社杣林(そまりん)」、「一般社団法人みつめる旅」の民間4社と、「五島市と民間連携による森林価値創出プロジェクトに係る連携協定」を締結しました。
最新技術で森を可視化「五島つながるカーボンクレジット」


「五島つながるカーボンクレジット」と名付けられたこのプロジェクトは、担い手不足により手入れが行き届かない久賀島の市有林、約815ヘクタールを対象に行われます。

具体的なスキームとしては、まずヤマハ発動機が産業用無人ヘリコプターやレーザー計測などの最新技術を用いて森林資源を高精度に計測・可視化します。そのデータをもとに、地元の林業会社である「杣林」が持続的な森林整備を行い、そこで創出されたCO2吸収量を、アイフォレストなどが「カーボンクレジット」として数値化・認証。環境対策や脱炭素経営に取り組む企業などへ販売する計画です。

プロジェクトを主導するアイフォレスト株式会社の丸山孝明代表取締役は、「森林価値をお金に変える新しいカーボンクレジットを生み出し、人と森、企業と森がつながるような仕組みを目指しています」と意気込みを語りました。
年間3500トンの吸収量、3000万円の収益見込む
事前の調査によると、対象となる森林のCO2吸収量は年間およそ3500トンにのぼり、クレジットの販売によって年間3000万円前後の収益が見込まれています。

五島市の出口太市長は、「このプロジェクトを通して、地域の力、防災力ですとか、水源の涵養(かんよう)力が高まることを期待しております」と述べ、世界遺産の島の環境保全と防災機能の向上に期待を寄せました。

事業で得られた収益は、地元の林業会社を通じて森の再生や、林業の担い手育成などに充てられる予定で、経済と環境が循環する持続可能なモデルケースとなることが期待されています。








