被爆体験者訴訟・控訴審の3回目の弁論が25日開かれ、10月1日に結審する見通しが示されました。
この裁判は、国が定める被爆地域や援護地域の外で原爆による放射性微粒子で被ばくしたと訴える被爆体験者43人が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めているものです。
弁論は福岡高等裁判所と長崎市の会場をリモートでつないで行われ、原告のうち10人が長崎の会場から参加しました。
今回は被告側が、原告の訴えに反論する書面を提出。
原告らが当時いた地域について、放射性降下物の影響は「健康被害を及ぼすレベルだったと認めるに足る科学的・合理的な根拠はない」とこれまでの主張を繰り返しました。
また広島の「黒い雨」訴訟をめぐり国が救済範囲を広げたことについては、「広島と長崎では降雨の状況などが異なる」などとし、広島のケースは当てはまらないと反論しました。
「黒い雨や灰が降った」という原告らの証言については「原爆投下から長い時間がたっており記憶違いの可能性などが介在している」として信用性に疑問を呈しました。
さらに、原告側が放射性微粒子が降った最大の証拠と位置付ける1945年の米軍マンハッタン調査団による残留放射線調査については信用性について改めて反論し、「仮に調査結果が正しかったとしても放射線量は健康に影響を及ぼすレベルではなかった」として、内部被ばくによる健康被害の可能性を訴える原告側と真っ向から対立しています。
裁判所は10月1日に結審する見通しを示し、被爆体験者救済の鍵を握る判決は年度内にも言い渡される見通しとなりました。