■ インバウンドは回復基調 課題は“人手不足” !?

【住】コロナ禍でゼロだった外国人観光客が少しずつ戻りつつあるというのは観光が主力産業の一つである長崎にとって、地域経済に与える影響は小さくないですよね?
【平】そうですね。これからのインバウンドの受け入れについて、長崎商工会議所の森 拓二郎 新会頭に聞きました。


11月1日、長崎商工会議所の新しい会頭に選ばれた森 拓二郎 会頭は──
クルーズ船入港のめどが立たない現状を踏まえて『今後のインバウンド戦略』について次のように述べました。


長崎商工会議所 森 拓二郎 新会頭:
「おそらく中国人の方は当分来ない。ゼロコロナ(政策)が続いている間は、クルーズ船も来ないし、中国人も来ないという前提の中で、“欧米人に来てもらえるような長崎”であってほしい。


欧米人の旅行の特徴は、まず長いこと──1泊2日とかじゃなくて、長期に色んな目的を持って滞在される。
そういう欧米人の方をお迎えするためのコンテンツというのは長崎は事欠かないと思いますので、買い物をするだけじゃない“自分の目的を持って色んな所に行く”欧米人をお迎えするような環境整備ができればと」


【住】インバウンド需要は今後伸びていくことが予想されますが、受け入れ側としての課題はどんなところでしょうか?
【平】まず一つ考えられるのが『人手不足』の問題です。
観光業を支える飲食や宿泊業者は、これまで“新型コロナの感染の波”に、売り上げを大きく左右されたため離職者が多く、そもそも人手不足の状況にありました。
そうした中で『全国旅行支援』がスタートし、“国内客が増加”したことで、ますます人手不足感が高まっている職場も少なくありません。

それに加えてインバウンドの受け入れとなると、お客様の数が増えるだけでなく、“外国語対応”を含めて業務が更に煩雑化しますから、適切なサービスの提供を維持していくのが難しくなることが予想されます。

【住】確かに人手不足は幅広い業種で課題となっていますから、忙しくなったからといってすぐに確保できるとは限りませんよね。

■ “免税店 直行ツアー”からの脱却 求められる“個人旅行客 対応”

【平】もう一つは商工会議所の森会頭も言及されていましたが、いかに滞在期間を延ばして“一人あたりの消費額”を上げるかということです。


コロナ禍前の2019年の観光庁の調査で、観光・レジャーを目的に訪日する外国人の『旅行1回あたり消費単価』というものがあるんですが、最も多かったのが北海道(11.9万円)、次いで東京都(9.9万円)、沖縄(9.3万円)と続いて、長崎県はというと2.8万円で、全国平均(3.7万円)を下回っているんです。

【住】せっかく来てもらっても、お金を落としてもらわないことには“地域経済への恩恵”も限られてしまいますよね。この要因は何なのでしょうか。


【平】これは(コロナ禍前に)長崎に来ていたクルーズ船の乗客は、到着後すぐに『貸切バスで郊外のデューティーフリーショップ(免税店)に行ってしまうツアー』が多く 『県内や市内を自由に周遊するツアー』が少なかったことが一因との指摘があります。
免税店へ直行するのではなく、県内や市内をゆっくり観光してくれるクルーズ船を入港させる営業努力が必要かもしれません。クルーズ船の数も大切ですが、“ツアーの質”も大切です。
それに加えて、これまでは“長崎に宿泊”してくれるような外国人が少なかったこともありますので、(船だけでなく)飛行機でやってくる“個人旅行の外国人”の取り込みも大切です。外国人は新幹線が好きですので、西九州新幹線も活用できると思います。
これからのインバウンドの本格的な再開に向けて、これらを『多言語で上手く発信』して、訪日外国人客が『長く長崎にいたい』と思えるような受け入れ体制を整えることが、インバウンドによる地域経済の盛り上げには欠かせないと思います。