長崎の暮らしと経済を分かりやすくお伝えしている『ウイークリーオピニオン』
平家 達史 NBC論説委員とお伝えしています。
年度下期のスタートとなる今月は“様々な制度” がスタートしたり、改正されたりするタイミングでもあります。今回は生活に影響がありそうなこのテーマです。
世帯収入に影響も? “106万円の壁” 適用拡大
住吉 光 キャスター(以下 【住】):
私も以前、アルバイトをしているときに直面したことがあるんですが、この “壁” というのは『パートやアルバイトの年収が “一定の額” を超えると、社会保険への加入義務が生じたり配偶者の扶養から外れたりすることですよね?
平家 達史 NBC論説委員(以下【平】):
そうですね。以前、最低賃金アップについて取り上げた時にも少し触れましたが、パートやアルバイトの方にとって(手取り額が大きく変化する) “年収の壁” というのが主に3つあります。

▼ 一つ目が『103万円の壁』
これを超えると、“所得税の納税義務” が生じる というボーダーラインです。
▼ 二つ目が『106万円の壁』
これを超えると “(一定の条件を満たした場合)社会保険に加入して、健康保険や厚生年金などの社会保険料を支払う義務” が生じてきます。
▼ 三つ目が『130万円の壁』
これを超えると “社会保険への加入に加えて、配偶者の扶養の範囲からも外れる” ことになります。
【住】これらの “壁” があることで、パートやアルバイトの方は、年間の収入額を家庭の都合やライフプランに合わせて調整しているというわけですね。
【平】そうです。そして今月から制度が改正されたのが『106万円の壁』です。
これまで『年収106万円以上』で、社会保険の加入対象となる条件は──

・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8万8千円以上
・2か月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
・勤め先の従業員数が500人以上 というものでした。
このうち今回変更となったのが『勤め先の従業員数』で、これまで“500人以上”だったのが、今月から“101人以上”となり、適用対象が大幅に拡大したんです。
【住】つまり『106万円の壁』の対象となる人が、これまでより増えた、ということですよね。パート・アルバイトの方の働き方に影響が出そうですね?
【平】これまで従業員数500人以上の比較的大きな企業だけだったのが、これからはそれよりも従業員数の少ない企業も対象になってきますから、『条件に当てはまる人』は長崎でも “かなり増える” と見られます。
■ 壁を超えるか否かで“手取り額”が変わる
【住】働く側としてはこれによって “手取り額” がどう変わるかが一番気になるところだと思いますが。
【平】はい、“壁ギリギリ”で 試算してみると、このようになります──

▽ 年収105万円の場合、所得税などを引いた『手取り額』はおよそ103万円
▽ 一方、年収106万円で“壁”を超えた場合、社会保険料も引かれることになりますので『手取り額』はおよそ89万円です。
【住】年収が1万円増えて“壁”を超えたことで、『手取り額』は、10万円以上も減ってしまうということですね…