明らかになった衝撃的脱出方法

ウナギはなぜかすべて尻尾の方から抜け出しており、長谷川助教と河端准教授らはドンコの体内からウナギがどうやって脱出しているかを探るため、造影剤である「硫酸バリウム水溶液」をウナギに注入。

X線映像撮影装置で脱出行動を観察したところ、さらに予想に反する衝撃的な行動が観察されました。

ウナギはドンコに飲み込まれ体の一部が胃まで達すると、尻尾を食道の方向に差し込み、体をぬるぬるとくねらせてバックで消化管内をさかのぼっていたのです。

先に尻尾がエラのすき間に到達、尾部の方から外に出て最後は体を渾身の力でくねらせ頭部を引き抜き脱出していました。【32匹中9匹が脱出】

胃の中に完全に飲み込まれた個体の一部は、脱出経路を探る様にぐるぐる回転し、食道への尾部差し込みに移行することができていました。【11匹中5匹】

一方、脱出に失敗したウナギはドンコの消化管内で徐々に弱り、平均200秒ほどで完全に動きがみられなくなったということです。

食べられた後、能動的に脱出する行動は魚類以外の分類群も含め非常に珍しい行動だということです。

謎多きウナギの生態を追う

研究グループが明らかにした脱出行動には、ウナギの細長くぬるぬるした形態に加え、消化される前に素早くさかのぼる筋力、胃の中の強酸性・無酸素な環境への耐性なども重要な要素と考えられています。

長谷川助教と河端准教授らは、絶滅危惧種に指定されているニホンウナギの知られざる生き残り戦略の解明を続けています。

【長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科・長谷川悠波助教】
行動・機能形態学研究室所属 
研究テーマ:『ニホンウナギ稚魚の逃避行動の解明』

<論文>
雑 誌 名:Current Biology(Impact Factor = 9.2)
執筆者名:長谷川 悠波(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
峰 一輝(実験当時:長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
平坂 勝也(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
横内 一樹(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所)
河端 雄毅(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
掲 載 日:2024年9月9日