男性同性カップルの住民票の続柄欄に「夫(未届)」と記載し、受理した長崎県大村市の手続きに対し、9月27日、大村市議会議員の3人が「住民票の正確かつ統一的な記載を求める決議案」を議長に提出しましたが、賛成少数で否決されました。

住民票の交付を受けたのは、大村市在住の同性カップル松浦慶太さんと藤山裕太郎さんで、大村市は今年5月、2人の希望に沿って松浦さんを「世帯主」とする住民票に、藤山さんを「夫(未届)」と記載する申請を受理しました。

決議案はいずれも会派「みらいの風」の光山千絵議員、村上秀明議員、松尾祥秀議員の3人が提出。

「住民基本台帳法にある『住民に関する記録を正確かつ統一的に行う』という制度の目的を鑑みれば、住民票の記載は国全体での統一的なじむ手続きを行うことが大原則である」と指摘。また、ことし7月に総務省が大村市に対して示した「実務上の支障をきたすおそれがある」との見解も根拠に挙げ、記載を見直し、正確かつ統一的な事務手続きを行うよう求めました。

議会では「大村市より先に『パートナーシップ宣誓制度』を導入した長崎市では、住民票ではこのような記載はしていない」と決議案に賛同する声があった一方、「『正確かつ統一的な記載』は目的ではなく、目的は『住民の福祉』である」「すでに交付されているもの。水をさすことになる」などの反対意見も挙がり、結果賛成7、反対16で賛成少数で否決となりました。

住民票の交付を受けたLGBTQ当事者の松浦慶太さんはこの動きに対し、「この話題が上がる度に胸が苦しくなる。いつまでそんな議論をするのか」「この議論が市議会で上がる度に不幸せだと感じる。全国的にこの住民票の記載が広がる中、そういう社会の空気を感知できておらず、とても低いレベルで議論しているように思う」とコメントしています。

■決議案全文■
住民票の正確かつ統一的な記載を求める決議

令和6年5月2日、本市は大村市パートナーシップ宣誓制度受領証が交付された住民に対し、統柄に「夫(未届)」の記載をした住民票の交付を行いました(以下、「本記載」と言う。)。住民基本台帳法には「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もって住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする」と定められています。

この「正確かつ統一的に行う」という制度の目的を鑑みれば、住民票の記載は国全体での統一的な事務手続きを行うことが大原則であると言えます。このことから、市が事前に総務省に問合せるなどの必要な対応をしないまま、本市独自の判断で本記載を行ったことは、慎重さに欠いており適正な措置とは言い難いものです。

また、「住民基本台帳事務処理要領」では、「法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取扱いを受けているので『夫(未届)・妻(未届)』と記載する」としており、それ以外での「夫(未届)・妻(未届)」の記載は想定されておらず、社会保障の制度運用上の必要性から、内緑の夫婦に対してのみ許されていると解することが出来ます。

併せて、平成30年6月8日の衆議院法務委員会での総務大臣政務官からは同性カップルの場合の住民票の続柄は「同居人」とする旨の回答がなされており、本市もそれに準ずる措置を執るべきものです。

さらに、本記載に関する本市からの質疑に対する本年7月8目付の総務省の見解では、「同性パートナーの続柄を、内縁の夫婦(事実婚)の続柄と同一にすることは、実務を担う各種社会保障の窓口で当該住民票の写しの続柄のみで適用の可否の判断をすることができなくなり、実務上の支障をきたすおそれがあります。」としており、本記載について実務上の問題があることを指摘しております。

以上のことにより、市長においては、本記載を適切に見直し、住民基本台帳法の目的に則った正確かつ統一的な住民基本台帳制度の事務手続きを行うよう強く求めるものであります。