■ ”抑止目的限定”首脳声明の直後に露が侵攻

ことし2月に始まったウクライナ侵攻。世界最大の核保有国 ロシアが、その使用をちらつかせながら軍事侵攻を続けています。

NPTは、発足時に核を持っていた5カ国(米・英・仏・中・露)に限り『核兵器保有を認め』代わりに『核軍縮交渉の義務』を課しています。
(他の核保有国)
不参加:イスラエル、インド、パキスタン
脱退:北朝鮮

『N5(エヌファイブ)』と呼ばれる核保有5か国は、ことし1月、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」とする声明を発表。
核兵器の役割を『防衛』や、お互いに持つことでけん制しあい、核の使用を抑える『抑止』に限定すべきとしました。

しかし、その翌月、ロシアはウクライナに侵攻し、核攻撃を示唆しています。
『N5声明』の趣旨に反する”この行為”を止めることはできるのでしょうか?

西田 教授:
「少なくとも ”核抑止を超えた部分” ──『ロシアの核恫喝はおかしい』というのは、そもそも『N5声明』で合意していますから、そこは最低限 ”本来なら合意できるはず”なんです。
でも、ロシアがそれに合意すると『自分がしたことを否定することになる』ので合意できるのかどうか…仮に合意したとしたら『一体、どの口が言うのか』という話になって、核軍縮における合意が ”非常に軽くなってしまう”んですね。
元々、『N5声明』自体が、首脳レベルで合意してるはずなのに──ロシアのプーチンも合意してるはずなんです。”首脳声明”って書いてありますから」
■ 核禁条約 「核抑止は誤り」 …核依存国 ”自分たちは否定された”

オーストリア ウイーンでの『核兵器禁止条約 第1回 締約国会議』(2022年6月)

アレクサンダー・クメント議長:「採択されました」
ことし6月、第1回 締約国会議が開催された『核兵器禁止条約』

NPTの元で核軍縮が進まないことに不満をつのらせた非保有国が生み出したもので、ウィーン宣言では「核兵器は死だけでなく、環境や経済にも深刻な損害を与える」「 ”核の抑止” も 壊滅的結末をもたらす危険性に基づくもので ”誤り” 」だと断じています。
『自国を守るために核兵器は必要だ』と考える国々は、この条約に ”否定的”で、NPT再検討会議での”核兵器禁止条約の扱いは、”抑制的になる” とみられています。
西田 教授:
「(核兵器禁止条約のため)一方で盛り上がってますけど、一方では盛り下がっているというか…(ウィーン宣言では)あれだけ ”核抑止を全面否定” してますから。
核抑止に依存している国からすると、”自分達は否定された” と思いますから。
(合意文書には)せいぜい客観的事実として『締約国会議が開かれました』という事実が入るか入らないかってところかなと思います」