大正時代に活躍した作家、島田清次郎を讃え、1994年に制定された島清恋愛文学賞。石川県にルーツを持つこの賞は、その名の通り「恋愛小説」に特化した文学賞として、30年以上にわたり数々の名作を世に送り出してきた。
人間の深層心理に迫る高樹のぶ子の『蔦燃』(第1回)に始まり、複雑な愛と性を描いた小池真理子の『欲望』(第5回)、女性の恋と自立をテーマにした岩井志麻子の『自由戀愛』(第9回)など、その時代の恋愛観を鮮やかに映し出す作品が選ばれてきた。
そして31年目となる今回、選ばれたのはピン芸人・ヒコロヒーの短編集『黙って喋って』。言葉にならない思いや、言葉によって揺れ動く感情の機微を描いた18の物語は、「恋愛小説の可能性を再認識させる」と高く評価された。
受賞を記念し、選考委員であり、自身も『ラプレス』で同賞を受賞した直木賞作家・桜木紫乃との対談が石川県金沢市で実現。ヒコロヒーの創作の裏側、色恋を紹介した【前編】に続き、【後編】はヒコロヒーが今、書きたい小説に迫る。

「50歳ぐらいの方たちの色恋を書いてみたい」
桜木: 今後、何か書いてみたいテーマはありますか?
ヒコロヒー: これを小説にするか、脚本にするか、コントにするかはまだ分からないんですけど、50歳ぐらいの方たちの色恋みたいなものには興味があります。
桜木: なぜ50歳なんですか?

ヒコロヒー: 50歳ぐらいの知り合いの方々の話を聞いていると、すごく魅力的だなと思うんです。結婚していても他に好きな人ができてしまったり、ずっと独身で来たけれど人生そのものを振り返らざるを得ない局面に立っていたり。その年代の方々が持つ雰囲気や哀愁が、すごく面白いなと。
桜木: 50歳は、男も女も色々と変化のある時期ですからね。30代、40代とは比べ物にならないくらい。
ヒコロヒー: 自分の人生はこれで良かったんだろうか、と。後悔したり、痛い目を見たりすることも、すごく当然のことのように思えるんです。そこに一つの筋があるような気がして。
桜木: それは面白いテーマですね。ぜひ小説で読んでみたいです。











