家屋の解体・撤去はなぜ、思うように進まないのでしょうか。「公費解体」は、地震で半壊以上となった住宅などを、自治体が所有者に代わり解体・撤去する制度。県は、およそ2万2000棟の家屋で公費解体が想定されるとの見通しを示していて、来年10月までの作業完了を目標に掲げています。一方、珠洲市では、これまでに2374棟の申請がありましたが、工事に着手できているのは、112棟にとどまっています。


「(この景色見てると)涙出てくるよね」

金沢市の解体業、中谷和浩さん。珠洲市内で発注があった解体工事を業者に割り振る調整役として、現場で指揮を執っています。


中谷さんが向かったのは、津波の被害を受けた三崎地区。

業者との会話
「ここの建物と、向こうに1本道があるんですけど、そこまで解体します」
「(範囲が)すごいな」
「元々旅館だったらしくて…」


工事にかかる期間は平均で7日から10日ほどとされていますが、中には、1か月程度を要する場所もあるといいます。一体、何故なのでしょうか?

地元業者
「津波が来て中にあったゴミがグシャグシャの状態だから。なんせ布団類、食器が多い…大変」


建物に残された家財道具は、原則、工事が始まる前に取り出す必要がありますが、建物が完全に潰れているなど、危険を伴う場合には、住民の同意を得た上で工事と並行しながら業者が撤去するケースもあるといいます。さらに、作業の進捗を左右するのは、ライフラインの復旧。解体で出る粉塵やほこりを抑えるのに、欠かせないのが「水」です。


県は今月以降、4、5人の作業員を1つのグループとして、1日に最大600班の事業者を確保しましたが、現地の活動拠点が不足していることなどから、すべての作業員が同時に作業できる体制には至っていないのが現状です。


珠洲市で解体工事を行う・中谷和浩さん(金沢市)
「あまりにも、現状、壊れている家が多い。でも計画は計画なんでとにかく進めるしかない。目の前の一棟一棟を壊さないと先に進めないので、何が何でも『最後までやっていくぞ』という気持ち」