編集後記

 みずきさんと出会ったのは4年前のことでした。

 当時中学2年生だった彼女の学校での様子を取材し、場面緘黙症が「ただ話せない」だけでなく、極度の不安から「体まで固まってしまう」という、想像以上に深刻な症状があることを知りました。

 そんな生きづらさを抱えながらも、「みいちゃんのお菓子工房」という居場所を見つけ、お菓子を作り続けてきたみずきさん。

 彼女の作るショートケーキの生クリームはとても軽くて、優しくて…。

 言葉はなくても、彼女の優しい気持ちがしっかりと伝わってくるのを実感したのを覚えています。取材を通して、私自身も彼女からたくさんの元気をもらっていました。

 今回、社会人になる節目を迎え、18歳になったみずきさんと4年ぶりに再会しました。

 すっかり大人びた彼女は、言葉こそ交わせないものの、プライベートでは友人と「推し活」を楽しむなど、自分らしい日々を送っていました。

 そして今、彼女の周りには、場面緘黙や自閉症など、生きづらさを抱える人たちが子どもから大人まで集まっています。

 おいしいケーキだけでなく、困難の中で自分の道を切り拓く彼女の力強い「生きざま」そのものが、皆の希望となっているのです。

 「安心できる居場所」と「周囲の支えと理解」があれば、人はこれほどまでに本来の輝きを放ち、誰かの光になれる。みずきさんの4年間は、そう教えてくれた気がします。

 社会では、まだこの症状が十分に知られていないと思います。症状への誤解が解け、みずきさんの周囲のような「温かい理解者の輪」が、社会全体に広がっていくことを心から願っています。

【記者紹介】

毎日放送報道情報局報道センター記者
宇治宮 汐梨
2018年入社。
大阪府政・大阪府警担当を経て、2026年5月から京都支局。
声を出せないまま転校した中学時代の同級生の存在をきっかけに、2022年から「場面緘黙症」についての取材を始める。
これまでに「失語症」など、周囲からは見えにくい生きづらさを抱える人たちを取材。

※この記事はMBSニュースとYahoo!ニュース・LINE NEWSによる共同連携企画です