「自分の家族が事件に関わるわけがない、大丈夫」
▼妹の美希子さんを亡くした 渡邊勇さん「『大丈夫やろ』と、勝手に思い込んでしまっている自分がいたんですね。世の中には事件とか事故とかいろいろありますけど、そこに関わるわけないやろという、何か意味のない認識ですよね。可能性としてはあるけれども、そんなことはないだろうと、思い込んでいました。」
「でも、時間が経つにつれて、情報がどんどん入ってくるわけですよね。どんどん不安が募っていく形でした。」
「私からも、妹(美希子さん)の方に電話をかけたりとか、LINEを送ったりとかしましたけど、返答がない状態。母と妹(美希子さんの姉)は、現地の京都に行くことになって、私自身も行きたかったんですけど、妻が妊娠中で、当時まだ2歳の子供もいましたので、家を守る側という形になりました。」

情報を集め続けるうちに募る不安…望まない結果に「ぐちゃぐちゃな感情でした」
▼渡邊勇さん「やれることって、家の中で情報を集め続けることしかないんです。リアルタイムでいろんな情報が流れているのをキャッチして、どんどん不安な気持ちになっていく、という状況でした。本当に祈るしかない。しかし、最も望まない結果の情報をもらう形になったんですね。」
「そのときの感覚は、本当に何か精神的、感情的に、味わったことがないような感情で、ぐちゃぐちゃな感じでした。」
「私自身、アニメーションやゲームが好きな人間だったので、美希子と一緒にテレビを見たり、漫画も交換したり、そういうこともしてきました。だから、私自身が好きじゃなかったら、彼女も興味を持たなかったのではないだろうかとか、僕がいたから、そういう影響を与えてしまったんじゃないだろうかという思考ですよね。」
「自分のせい、みたいな考えというのが、どうしても出てきてしまったのをすごく記憶していますし、今でもそういう要素というのは少し残っているのかなと思います。」
勇さんにも、『カウンセリングを受けないか』という話がありました。一度は断りましたが、発熱が続くなど、体にも不調があらわれたといいます。
「目が死んでいるような状態だったらしい」カウンセリングを断った理由
▼渡邊勇さん「最初は、精神的に動揺しているのを受け入れたくないという自分もいたと思います。僕はしっかりしなければ、僕は冷静でいなければ、という感じでした。」
「あと、会社勤めとかしていると可能性があるかなと思うんですけど、精神的なカウンセリングを受けているというのは、周りの同僚とか上司とかに敬遠されるんじゃないだろうかとか、そういう変な先入観がありました。」
「こういうことを先入観なく、もうちょっとフラットに(カウンセリングについて)みんなが感じられるような世の中になればいいなというのも、実体験として感じています。」
「カウンセリングを受けるようになって、妻からも『目に輝きが戻ってきたね』と言われます。当時、目が死んでいるような状態だったらしいんですね、自分ではわかってなかったんですけれど。」
「本当に、定期的に来ていただいているカウンセラーさんにはすごくありがたいなと思っていますし、このような形で助けていただいてる、警察さんとかにも、本当に感謝したいなと思っております。」