タイヤを空転させ車を横滑りさせる「ドリフト」。全国規模の大会が行われていることはご存じでしょうか?シリーズ首位で上位カテゴリー出場を目指す高知県出身のドライバーが、ドリフトにかける思いを取材しました。

エンジン音を響かせながら横滑りする車を巧みにコントロールするドリフト。後輪、もしくは4つのタイヤを滑らせながら車を走らせる走法のことで、JAF公認のモータースポーツ。全国規模の大会も開かれているんです。

高知市・土佐山出身の栁和孝(やなぎ・かずたか)さん、40歳。2年前から、ドリフトの大会、「D1ライツ」に参戦しています。

(栁和孝さん)
「大会に出ると審査員がいて、ちゃんとした結果が出るじゃないですか、そこが一番いいのかなと。色んな人とここで走っても『俺うまい』『あの人下手』とかわかるんですけど、結果がすべてという競技の世界は魅力かなと思います」

「D1ライツ」とはJAF公認のドリフト競技会、「D1グランプリ」の登竜門にあたる大会で、福島や岡山など全国各地のサーキットで開かれています。大会では速度やドリフトの角度などが競われ、栁さんは、8月行われたラウンド6で今季初優勝を飾りポイントで首位に立っています。

そんな栁さんのドリフトを実際に横に乗って体験してみることに…

(野中麟太郎 記者)
「車が加速したと思ったら、ふっと力が抜けて滑り始めて…本当に非日常体験が味わえました」

栁さんのマシン、「日産・シルビア」はガラスの一部をアクリルに変えたり、ダッシュボードを建材で自作したりするなどさまざまな改造が施されています。エンジンのパワーは最大で740馬力!栁さん自身が乗せ換えたというこのエンジンは、純正の3倍以上のパワーが出ているということです。

(栁和孝さん)
「今のドリフトの競技では定番のエンジンです。思ってる以上に熱がすごくて、キャップなどがすぐ溶けるので、いろいろ熱対策、こういうのを巻かないとすぐ溶けてしまいますね」

「ドリフト歴」は20年ほど。小さいころから車が好きで、小学生の時にはドリフトに興味をもっていたといいます。

(栁和孝さん)
「ビデオなどで見た記憶があるんですけど、それでドリフトしてみたいなって思ったのが小学生ぐらい。車って本来まっすぐ走るのに、(ドリフトでは)右カーブなのにハンドルを左に切っているという不可思議な行為とスピード感がいいかなと思ってずっとやってます」

仕事は車関係かと思いきや、リフォーム業。自らスポンサーを集めてD1ライツに参戦しています。車体に貼られた数々の企業のステッカーが栁さんの努力を感じさせます。

(栁さん)
「チラシを作って渡してるんですけど、それを見て『じゃあ頑張れや』みたいな、高知ならではの感じで皆さん協力してくれている」

ドリフトの練習は、サーキットだけではありません。こちらは「SIM(シム)」という、実在するコースや車を使ってドリフトを練習できるeスポーツで、世界中で人気を集めています。

(栁和孝さん)
「慣れると実車っぽいのですごく練習になるというか、D1ライツに出るうえで知らないコースを走ることが多いんですよ。そういう時にSIMだったらどこでも走りに行けるので予習ができる」

ただ、「SIM」をプレイするだけではありません。車やコースのデータも作成していて、実際のサーキットで練習した後は得られた感触をデータに落とし込んでいるといいます。

サーキットはもちろん家でもドリフトが頭から離れない栁さんには、ある目標があります。

(栁和孝さん)
「D1グランプリっていう日本で一番大きいカテゴリーに来年出るというのが目標です」

栁さんが現在首位となっているのはD1ライツ。D1グランプリはその上位にあたります。栁さんは出場条件を満たしていますが自身の実力に納得ができておらず、参戦を見送っています。自ら課した条件は「ライツ」でのシリーズ優勝。ライツのチャンピオンとしてグランプリ参戦を目指します。

(栁和孝さん)
「お客さんに『すごい』って言ってもらえるような走りをしたくて、今もそれを目標にずっとやっていて、たまたまそれがいい感じに走れているので1位を目指してやりたいですね。あまり車に興味ない子とかもいるんですけど、そういう人が見て感動したとか言ってもらえて、そういうのをもっと出せるようになりたいと思います」

今シーズン、残すは3戦。目前まで迫った幼い頃からの夢の舞台に向けて栁さんは全力でハンドルを切ります。D1ライツはラウンド7と8がこの土日に奈良で、最後のラウンド9が11月に千葉で開催されます。