植物画=ボタニカルアートと陶磁器に触れる企画展が高知県立美術館で開かれています。18世紀のイギリスで王室の支援を受けて発展した植物画と陶磁器。作品や製品を通してその魅力に迫ります。

まるで花々の写真が飾られているかのようなこちらの作品。よく見ると手作業で緻密に葉っぱや花びらが描かれています。

県立美術館で開かれている「英国王室に咲くボタニカルアートとウェッジウッド」。18世紀以降に描かれたボタニカルアートと呼ばれる植物画や陶磁器などおよそ220点が展示されています。ボタニカルアートは、1760年に即位したジョージ3世とシャーロット王妃らイギリス王室が、世界各地の植物収集を支援し発展した植物画です。
(県立美術館 奥野克仁 学芸課長)
「ちょうど中世以来、『ペスト』や『コレラ』など感染症がまん延するといった時代背景もあり、自然のものを家に持ち込むことができなかったんですけど、その代わりに植物画を求めてそれを額に入れて家に飾るということが行われていた」
当時、写真やカラー印刷といった技術はなく、ボタニカルアートは学者たちにとっても植物学発展のために欠かせない存在でした。

まるで鳥の姿を表しているかのようなこちらの作品、「ゴクラクチョウカ」という植物です。
(県立美術館 奥野克仁 学芸課長)
「『水彩』で一点一点きれいな絵をつけて仕上げている大変手の込んだ作品になっています。このより後の時代になると『花』だけでなく、『葉がどのようにに続いているか』など『全体図』を描くが、これはまだ『植物画の始めのころの作品』なので“花だけを特徴的に描いている”と言える」

こちらは「カーティス・ボタニカルマガジン」という植物図鑑です。当時、ボタニカルアートに触れたのは学者や貴族が中心でしたが、この図鑑の創刊をきっかけに一般市民にもその存在が知れ渡り、人々の暮らしは豊かになったといいます。
19世紀ごろになると大胆な構図や、色鮮やかな作品が多くなり、時代と共に変化する画家たちの嗜好の違いも感じることができます。

こちらは春の花壇を彩るヒヤシンスが描かれた作品です。
(県立美術館 奥野克仁 学芸課長)
「19世紀の初頭に描かれたもの。植物画が発展していく過程の中で描かれた珍しいタイプの植物画なんですけど、背景がしっかり描かれています。“劇的”な、“心が動く”ようなそういった感じがする、それがヨーロッパのロマンティシズムであるわけですね。“神秘的”な感じがするいかにも19世紀的な作品ではないかと思います」
あの牧野富太郎博士が描いた植物画もあります。種や実がパーツごとに描かれていて、博士の植物への「こだわり」や「愛」が感じられます。

また、別の会場にはテーブルウェアのトップブランド「ウェッジウッド」の世界も広がっています。乳白色の下地に緑色の植物が描かれた上品な陶磁器。「クリームウェア」と呼ばれ、ウェッジウッドを代表するものです。このウェッジウッドも18世紀、植物画とともに発展しました。

(県立美術館 奥野克仁 学芸課長)
「(ウェッジウッド創業期は)イギリスの産業革命の時代でして、このウェッジウッドの陶磁器も産業革命を代表するような産物であった。中でもクリームウェアはウェッジウッドの代表的なシリーズで、イギリスの宮廷に献上されて王妃から称賛されて“クイーンズウェア”という称号を得ている」
側面には植物が描かれていて、王室の支援があって植物画と陶磁器産業が発展してきたという歴史の一端を垣間見ることができます。
(県立美術館 奥野克仁 学芸課長)
「例えば『ウェッジウッド』ですと植物の図柄が描かれているのがありますし、産業と科学、美術が一体となって発展していった18世紀から今に至るイギリスの文化を味わっていただけるんじゃないかと思います」
企画展は、6月29日まで開かれています。