「楽しい日々をできなくした」
結審を前に、迎えた最終陳述。西原被告は、言いたいことをまとめたという紙を手に証言台に立ち、その内容を読み上げた。
「ひどい暴行をしてしまった、大変申し訳ないことをした」
「楽しい日々をできなくした、大変申し訳ない」
「弁償や服役など、罪を償いたい」
「しかしかえって来ることはない、申し訳ない」
「逆の立場なら絶対に許せない」
「真剣に向き合って罪を償う」
「短気な性格と向き合って直していきたい」
事件から5年目の判決
2023年3月10日に開かれた判決公判。松山地裁の高杉昌希裁判長は、起訴内容を全面的に認め、被告に求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
最初の裁判で懲役19年の判決が言い渡されてから、約4年半が経過していた。
判決の中で高杉裁判長は、一連の犯行について「強い殺意に基づいた、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質で残忍な行為」「ドライブレコーダーの消去など罪証隠滅行為は卑劣」と非難した。
判決の理由が読み上げられる。
「被害者は30歳という若さで突如生涯を閉じることを余儀なくされた」
「新居を構え、ゆくゆくは子どもを授かり夫とともに温かい家庭を築くことを思い描いていたのに、被告の手によってその未来を奪われた」
「わいせつな行為により尊厳は大きく踏みにじられた」
被害者参加制度で意見を述べた、被害者の母親と夫の心情にも及んだ。
「女手ひとつで大切に育ててきた愛娘を失い、大きな喪失感と、被告に対する深い憎しみ、怒りから心身に不調をきたした」
「心の支えとなっていた最愛の妻を失ったことが受け入れられず、思い出の場所に行って被害者の面影を探し、抱えきれない悲しみや怒りで苦しんでいる」
そして西原被告の「障害」について触れる。
「被告には自閉傾向を含む軽度知的障害があり、一般的に衝動を抑制しにくい側面があった」と認定した上で、運転手として働くなど通常の社会生活を送っていたことや、犯行時には証拠隠滅行為を取っていたことなどを挙げ「障害が犯行に与えた影響は限定的で、被告のために大きく考慮することができない」と指摘。
その上で「被害者に落ち度があるような弁解を繰り返し、自らの犯した罪に真摯に向き合うことができているとは言い難い」「謝罪の言葉は表面的」「事件から5年近くが経過してようやく書き上げた謝罪文に弁解を記載するなど、遺族らの感情を逆なでした」と言及。反省は不十分と言わざるを得ないと結論付けた。
そして39歳になっていた西原被告に対して、判決が言い渡された。前回の一審判決より重い、求刑通りとなる無期懲役だった。